東急電鉄は,2023(令和5)年3月の実施に向け,国土交通大臣あてに鉄軌道旅客運賃の変更認可申請を行なったと発表した.
今回の運賃改定は,上記のような経営環境下においても,安全性・安定性を支える高水準な鉄道インフラを適切に維持・更新し,将来世代に負担を先送りすることなく鉄道事業を継続するとともに,社会に必要とされる価値を今後も提供していくために行なうもの.消費税率変更によるものを除くと,2005(平成17)年の運賃改定以来17年ぶりの改定となる.
改定率は12.9%とし,11.7%の増収率を見込んでいる.鉄道線のうち,東横線・目黒線・田園都市線・大井町線・池上線・東急多摩川線の普通運賃については,1円単位となるIC運賃を含めて,初乗り140円とする.そのほかの区間については改定率と同程度の値上げとし,渋谷—横浜間の現金運賃は310円(現行280円),IC運賃は309円(現行272円)とする.こどもの国線は通勤・通学定期運賃を含めて運賃据え置きとし,世田谷線はIC運賃を含めて160円とする.
定期運賃については,こどもの国線を除いて改定率と同程度の引き上げとし,通学定期については家計負担に配慮し,全線で運賃据え置きとする.なお,利用客の負担増に配慮し,子育て世代やシニア層に向けた施策などもあわせて検討するとしている.
東急ではこれまでに安全性・安定性の確保を目的に「3つの100%」として,ホームドア・センサ付き固定式ホーム柵や車内防犯カメラ,踏切障害物検知装置を完備するなど,業界水準を大きく上回る規模の設備投資を継続的に実施してきた.一方で設備維持に要する費用は年々増加し,加えて,新型コロナウイルス感染症拡大によるテレワークなどの新しい生活様式の定着により,とくに定期利用者が同業他社と比較しても大きく減少していることから,今後もコロナ前の需要水準には戻らないと想定され,厳しい経営状況にあるとしている.
2021(令和3)年5月に発表した中期事業戦略「3つの変革・4つの価値」にもとづき,固定費削減や生産性向上を目的とした事業構造変革をはじめとする経営努力を徹底しながら,2022(令和4)年度から2025(令和7)年度までの4年間,各年度450億円規模の設備投資を継続して実施する.
安全・安心や運行安定性を維持,向上させるための設備更新を中心としつつ,鉄道に今後期待される駅,車両のさらなるセキュリティ強化,脱炭素・循環形社会の実現に向けた省エネ設備の導入や鉄道サービスのDX化のための5G通信網の整備など,将来にわたり公共交通としての使命を果たし続けるために必要な取組を進めるとしている.
詳しくは,東急電鉄ニュースリリースに掲載されている.
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