近畿日本鉄道は,ソフトバンク株式会社とアムニモ株式会社の技術協力のもと,IoTを活用した踏切設備の状態を遠隔で監視するシステム(以下:踏切遠隔状態監視システム)を構築し,2021(令和3)年11月から近鉄の踏切設備に導入したと発表した.
これは,鉄道業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進による事業運営の効率化を目的に導入したもので,作業員の働き方の見直しなどを進めるなかで,踏切設備などの各種機器の異常検知時や踏切での事故発生時など,現地に出動しなければ確認できない作業について,遠隔での作業支援の検討を進めてきた.
踏切遠隔状態監視システムは,踏切設備から取得した動作記録や監視カメラの映像を,ソフトバンクのLTE回線を利用して伝送する.具体的には,踏切設備の動作記録装置と監視カメラを,アムニモが提供するLTE回線対応エッジゲートウェイ「AG10」に接続し,さらにソフトバンクが取り扱うリモート接続サービス「remote.it(リモートイット)」(remot3.it社提供)を利用して,管理者のパソコンへデータや映像を伝送する.「remote.it」は,グローバルIPが不要で,サーバーを介さずにクライアント(端末)同士が直接データをやりとりできるピア・ツー・ピア(P2P)通信ができるため,外部からの不正アクセスや盗聴のリスクを低減しながら,セキュアにデータを伝送することができる.
近鉄は,上記のシステムの導入により,踏切制御装置や警報機,遮断機などの踏切設備の動作記録や監視カメラの映像を遠隔で確認できるため,異常発生時の早期の原因特定や復旧作業の効率化が期待できるとしている.システムは現在,大阪線・名古屋線の2ヵ所で運用を開始しており,そのほかの踏切設備への導入を進める.また,今後は踏切設備のみならず,車庫内の電気設備の監視など,他の設備へのシステムの応用も検討し,IoTの活用による作業の効率化や,より安全で安定した鉄道輸送サービスの提供に取り組む.
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画像はいずれも近畿日本鉄道提供