西武鉄道は,複数のメーカーとともにAIや3D画像解析を用いた踏切内の異常検知システムを開発し,人や自転車の通行が比較的多い3ヵ所の人道踏切において,2021(令和3)年12月14日(火)から順次,導入試験を開始すると発表した.
これは,約3年間にわたる実地での精度検証の結果,安定した検知能力が確認できたため行なうもので,各踏切の状況にあった検知システムを導入できるよう,「踏切滞留AI監視システム」と「3D画像解析踏切監視システム」を並行して実施する.
これまで人道踏切内に人が取り残された場合,非常ボタンを押すことが,列車に異常を知らせる確実かつ唯一の方法であった.今回導入する2種類のシステムは,人の検知性能に優れているほか,従来の支障検知装置と比較して容易かつ安価に設置することができるため,踏切のさらなる安全性向上が期待されている.
試験は,おもに人の滞留異常を踏切内で検知した場合に,特殊信号発光機を動作させ運転士へ危険を知らせる「踏切滞留AI監視システム」の検証(検知システムと特殊信号発行機の連動)と,カメラにより遠隔でリアルタイムに踏切の状況を把握することで,スムーズな安全確認を支援する「3D画像解析踏切監視システム」の検証を行なう.
沖電気工業・丸紅ネットワークソリューションズとの共同開発である「踏切滞留AI監視システム」は,踏切内の人を踏切カメラ映像からAI処理し,物体の形状を認識する.自動車などの物体の滞留を検知する「物体検知」と人の移動・滞留を検知する「骨格検知」の複数のAIアルゴリズムにより,高い精度で迅速に踏切道の自動車などや人の検知を行なう.また,AIカメラに低照度カメラを採用することで,夜間も鮮明な画像解析ができる.
試験場所は,池袋線の「池袋第9号踏切」と「所沢第3号踏切」で,それぞれ12月14日(火)および12月16日(木)から2022(令和4)年3月31日(木)までを試験期間とする予定.
コンピュータシステム研究所との共同開発である「3D画像解析踏切監視システム」は,3Dカメラを使用した高精度3D画像解析システムで,踏切内に取り残された人を検知する.左右2個のレンズを内蔵した3Dカメラによる画像解析で,左右カメラの視差により人の目と同様に距離・高さ,ボリュームを認識することで高精度な検知が可能となる.また,体積のない光や影を検知しないため,自然環境下に左右されない安定したパフォーマンスが期待できる.
試験場所は,新宿線の「井荻第2号踏切」で,12月21日(火)から2022(令和4)年3月31日(木)までを試験期間とする予定.
今後は,上記の導入試験の結果を踏まえ,2022(令和4)年度以降の本格導入を目指しており,踏切の安全対策強化を図るとしている.
一部画像は西武鉄道ニュースリリースから