JR東海は,2021(令和3)年度の重点施策を発表した.
2021(令和3)年度も安全・安定輸送を優先し,鉄道事業においては,災害対策をはじめとした安全対策を着実に進めるとともに,東海道新幹線では「N700S」を13編成投入し,既存の「N700A」については「N700S」の一部機能を追加する改造工事を進める.また,「のぞみ12本ダイヤ」を活用し,十分な輸送力を提供するとともに,利用の回復状況にあわせつつ,東京オリンピック・パラリンピックの開催も見据え,適切な列車設定を行なう.「エクスプレス予約」・「スマートEX」については,さらなる利用拡大を進める.
ホーム上の可動柵については,引き続き東海道新幹線の新大阪駅で設置工事を進め,21番線・22番線で使用を開始する.車椅子利用者に向けて,車椅子スペースを6席設置した「N700S」の投入と,車椅子対応座席の「EXサービス」(エクスプレス予約・スマートEX)での予約の試行を行なう.
在来線では新形式の通勤形車両315系を56両投入し,営業運転を開始する.315系の投入にあわせ,輸送サービスの向上と効率的な輸送体系の構築を実現するダイヤ改正の準備を進める.次期特急車両HC85系については,量産車の新製に向けた設計などの諸準備を進める.なお,HC85系については,2022(令和4)年から2023(令和5)年度にかけて64両を投入する計画が発表されており,試験走行車の4両は量産車仕様に改造される.
設備関連では,東海道本線刈谷駅のホーム拡幅と可動柵の設置などに向けた工事や,武豊線半田駅付近の連続立体交差化に向け高架橋の工事を進める.金山駅では,東海道本線上り線ホームに続き,下り線ホームでも可動柵の設置工事を進め,QRコードを利用したホーム可動柵開閉システムの実証試験を行なう.このほか,駅におけるエレベータや多機能トイレの設置や,引き続き乗降1千人以上の駅ホームを対象に,内方線付き点状ブロックを整備する.
技術開発などについては,状態監視技術などを活用した検査や保守の高度化・省力化,および設備の維持更新におけるコストダウンにつながる技術開発や,地震や豪雨などの各種災害に対して,より安全性を高めるための技術開発を行なう.
超電導リニアによる中央新幹線計画については,工期が長期間にわたり難易度が高い,南アルプストンネルや品川駅,名古屋駅,山岳トンネル,都市部非常口,中間駅,高架橋などについて,引き続き各種工事を進める.南アルプストンネル静岡工区については,国土交通省主催の有識者会議に真摯に対応し,大井川流域の懸念を解消することに努める.
山梨リニア実験線では,高温超電導磁石の営業線への投入に向けた走行試験を実施し,必要なデータを取得する.取得したデータをもとに,営業車両の仕様策定と設計に着手し,保守体系の確立に向けた開発・実証などを進める.また,さらなる超電導リニア技術のブラッシュアップや営業線の建設・運営・保守について,より一層のコストダウンに取り組む.
このほか,高速鉄道システムの海外展開については,米国テキサスプロジェクトの技術支援や台湾高速鉄道での運行管理システム・電力関連設備の更新などに関する技術コンサルティングを継続的に実施する.関連事業については,JRセントラルタワーズとJRゲートタワー事業を軸に,店舗の品揃え強化やサービス向上,駅商業施設リニューアルや当社保有地の有効活用を継続する.
写真はいずれもイメージです.