■阿佐東線に海部─阿波海南間を編入して阿佐東線鉄道部に
阿佐海岸鉄道阿佐東線は徳島県と高知県にまたがる第三セクターだ.令和2(2020)年11月までは海部-甲浦間8.5kmを結び,海部でJR牟岐線と接続.JR牟岐線からの甲浦乗り入れも実施されていた.
その阿佐海岸鉄道が地元自治体とともにDMV導入協議会を設立したのが平成28(2016)年.その際の導入理由は以下のとおりだった.
・車両自体が観光資源となり,新しい人の流れをつくり,観光振興に大きく寄与する.
・マイクロバスをベースとするため,鉄道のDCと比較して維持費が削減できる.
・鉄道とバスのシームレスな交通体系は,高齢化が進む阿佐東地域の地域公共交通の拡充が期待できる.
・南海トラフ地震などの大規模災害時,残った線路と道路をつなぐことで交通機能を維持し,被災者の救助,支援をいち早く行なうことができる.
これにともない,JR牟岐線と接続する海部駅構内は高架線で,道路部との接続点になるモード・インターチェンジ(線路走行モードと道路走行モードを切り替える場所,以下MIC)が大規模な施設となるため,JR牟岐線阿波海南─海部間1.5kmを阿佐海岸鉄道阿佐東線に編入し,両線の接続駅を海部から阿波海南に移転させることになった.
施設工事は昨今の新型コロナ事情に起因してやや遅れたが,令和2(2020)年12月からは阿佐東線海部─甲浦間全線を運休してDMV運行に向けた軌道,保安装置切替工事を実施(同時にJR牟岐線牟岐─海部間も全面運休して軌道,保安装置の工事を実施).この結果,阿佐東線の鉄道部として,新たに阿波海南信号場─甲浦信号場間が設定され,両信号場にはMICが設けられた.
なお,軌道は従来の阿佐東線のものを最大限に活用した上で,旧海部駅構内のJR牟岐線ホームとの分岐,引き続き車庫として使用される宍喰車両基地への分岐がなくなり,阿波海南信号場─甲浦信号場は分岐線のない完全な単線となっている.