東急,伊豆急行,首都高速道路,首都高技術の4社は,共同開発した「鉄道版インフラドクター」を,2020(令和2)年6月中旬から実施する伊豆急行のトンネル検査に導入すると発表した.
4社では,鉄道施設の保守点検および管理作業の精度向上と効率化を目的に,鉄道保守新技術(以下:鉄道版インフラドクター)の共同開発を進めており,実証実験と技術検証の結果,有効性が確認できたため導入に至った.
インフラドクター®は,首都高技術,朝日航洋,エリジオンの3社が共同開発した道路維持管理システムで,点群取得,各種管理台帳データ,構造物の変状検出などを一体的に管理・運用することが可能.システムはすでに首都高速道路で運用中であるが,鉄道において実用化は日本で初めての取組となる.
伊豆急行では,すべてのトンネル(31ヵ所,約17km)を対象に導入する.同社では,大規模かつ詳細なトンネル検査(特別全般検査)を20年に1回実施しているが,従来の検査では,高所を含めたすべてのトンネルの壁面を目視で点検し,異常が疑われる場所の打音調査や,展開図の作成など,多くの人手が必要であった.
「鉄道版インフラドクター」では,専用の検測車両(自動車)を貨車に積載のうえ, システムを構築, 活用することで近接目視点検の代替となる.また,3次元点群データや高解像度カメラの画像の解析により,トンネル壁面の浮きや,はく離などの要注意場所を効率的に抽出することができ,打音調査が必要な場所の絞り込みが可能となる.これらにより,従来の近接目視点検に相当する検査日数は,15日程度から3日と約8割減少する見込みとし,打音調査を除く検査費用についても約4割減少する見込みとしており,点検作業の効率化,人手不足の解消およびコスト削減につなげる.
また,特別全般検査で必要なトンネル壁面の展開図などを,計測した各データから自動的に作成することが可能となるため,事務作業も大幅な省力化が可能となる.さらに,検査の機械化が進むため,検査精度のバラつき解消や,技術継承の支援などの効果もあるとし,今後はさらに鉄道に特化した,建築限界の自動抽出などの技術開発を進めるとともに,他鉄道事業者への展開も検討する.
写真はすべて東急提供