JR貨物では,2020(令和2)年度事業計画を発表した.
このなかで,鉄道施設の整備に関する計画では,「安全の確立」,「安定輸送の確保」に資する鉄道施設の整備・更新を継続して実施するものとしており,EF210形300番台・DD200形・HD300形の新製を進める.車両故障による輸送障害を未然に防止するため,老朽車両の取替えを計画的に進めるとともに,脱線事故の対策としてコンテナ車の台車構成部品の特性見直しや,新形式機関車のZ形けん引リンク装置垂下防止対策を実施する.
輸送設備の維持更新としては,まくらぎの鉄まくらぎ化や,土木・電気設備の更新,電車線設備・連動装置の更新を実施する.経営体質の改善では,運転系基幹システムの改良・更新や,システムによる列車編成通知書作成の本稼働,トラックの荷役作業待ち時間とフォークリフトの効率作業を目的とした「トラックドライバーアプリ」の開発など,各システム導入による省力化を推進する.
保安・防災関係では,橋りょうなどの耐震工事や,東京貨物ターミナル駅高度利用プロジェクトの推進,仙台貨物ターミナル駅移転を実施する.
災害発生時のBCP(事業継続計画)強化として,「平成30年7月豪雨」を契機に設置された「災害リスク検討会」や代行トラックドライバーの宿泊施設,トラック駐車場の事前選定などを継続実施する.また,代替輸送力・輸送手配におけるシミュレーションをさらに充実させるほか,代行輸送や迂回運転など冗長性機能の確保の一環として,運用線区拡大に向けた一部機関車の改造を計画する.
また,収入の確保,サービス改善および経費削減,生産性向上に直結する投資を進める.あわせて「業務創造推進プロジェクト」や,技術の進展を見据え,時代を先取りした技術革新を具体化する投資に取り組み,貨物鉄道事業の基盤強化を図る.具体的には,駅構内トラックの隊列走行や無人運転,フォークリフトなどの荷役機械や入換機関車の遠隔操縦などの開発を,移転後の仙台貨物ターミナル駅への導入も視野に入れ検討を進める.また次世代コンテナ貨車導入に向けた新たな緊締装置の検討・開発や,予防保全の強化に向けてIoTやビッグデータなどの技術を用いた車両状態監視システムの開発なども進める.
海外事業については,タイにおいて要望のある,危険品の鉄道コンテナ輸送の実現に向け,支援を行なうことで事業化につなげる.インドでは,日系運送企業と共同で鉄道による完成車輸送事業の実施に向けた検討を進める.このほか,インドネシア・マレーシアでは技術支援の可能性,カナダ・ブラジルでの鉄道事業関係会社への出資検討・技術支援業務,ベトナムでの貨物専用鉄道の開発・運営など,各種事業への参入について調査実施を検討する.