パナソニック(ライフソリューションズ社)は,JR東日本と共同研究開発した,PLC(電力線通信)による調光調色が可能な駅ホーム用照明(計594台)を,2020(令和2)年3月14日(土)に開業する山手線・京浜東北線高輪ゲートウェイ駅に納入したと発表した.PLCによる調光調色照明制御が駅のホームに本格採用されるのは,国内初(2020年3月4日現在)となる.
照明器具を調光調色するためには,電源線とは別に信号線の敷設が必要だが,とくに駅ホームでの改修は,工事可能な時間が終電から始発までの短時間に限られてしまうなど費用と工期を要するため,これまでに駅での照明制御システムの導入は少なかった.また,信号線不要の通信方式として無線方式があるものの,駅構内では無線LANや列車無線など,さまざまな無線が利用されているため,混信による通信性能の低下が懸念されたことから,信号線が不要かつ無線を使用しない方法としてPLCに着目した.
PLCとは,電気機器にエネルギーを供給する電力線に高周波の通信用信号を乗せて伝送することで,電力線を通信線としても利用する技術である.従来は,照明制御盤から各照明器具へ信号線を敷設する必要があったが,PLC照明制御システムでは信号線が不要となる.
共同研究開発では,まずPLCの通信方式の選定を実施した.PLCは,使用する通信周波数帯域によって低速PLC(10〜450kHz)と高速PLC(2〜30MHz)に分けられるが,今回は屋外使用の法整備が進んでいる低速PLCのうち,電源環境ノイズの影響を受けにくいG3-PLC方式を採用.しかし,実際の駅においては,さまざまな電気機器の使用にともなう電磁波の影響などが想定されたため,電源環境(ノイズなど)を測定し,それらの環境の中でも正常に動作するよう最適な回路設計を実施した.さらに,PLC通信部を内蔵した照明器具(試作機)を製作し,2017(平成29)年7月から12月までの間,千葉駅のホームへの設置とフィールド試験を実施.実環境において運用可能な通信品質であることを確認した.
上記のような取組を踏まえ開発したホーム用照明器具は,時間帯や天候に応じ,PLCにより調光調色制御が可能となり,日中は自然光との調和を図るため,昼白色から白色の光とし,夕方からはコンコースと合わせて電球色の温かみのある光に調光する.なお,高輪ゲートウェイ駅には,ホーム照明のほか,コンコースや外構などにも,パナソニックの照明器具や統合監視システムなどが採用されている.
写真はすべてパナソニック提供