公益財団法人鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は,搭載機器の小形化・高性能化を行ない,起動加速度を高めた燃料電池ハイブリッド試験電車を,2019(令和元)年10月24日(木)に国立研究所で報道陣に公開した.
今回公開されたのは,R291系試験車で,クヤR291-1とクモヤR290-1の2両編成.
2008(平成20)年から,燃料電池とバッテリのハイブリッド構成としたこの試験電車を用いて所内試験線での走行試験などを実施し,鉄道車両としての基本性能を確認していたが,この時点では搭載機器が大きく一部は室内に設置されており,また加速性能もディーゼル車並みにとどまっていた.
今回,搭載機器の小形化・高性能化を行ない,燃料電池の高出力密度化や冷却装置の分散配置などにより,出力を50%増すとともに,出力当たり体積を20%減少させた.
クヤR291はこれまで床下に高圧水素タンク,車内に燃料電池モジュールと電力変換装置を搭載していたが,燃料電池モジュールを床下に,電力変換装置はクモヤR290-1の床下に移設した.クモヤR290-1は,これまで車内にLi-ionバッテリと電力変換装置が搭載されていたが,これらについても床下に移設した.
これにより車内空間が生まれ,より営業用車両に近くなった形となり,鉄道事業者による将来の燃料電池電車導入に資するものとなっている.
今後は,鉄道総研内試験線の走行試験で,エネルギー効率向上を目指したハイブリッドシステムの制御方法の改良や,燃料電池への負担が小さい制御方法などの研究開発を行なう予定.
写真は編集部撮影(取材協力:鉄道総合技術研究所)