公益財団法人鉄道総合技術研究所では,経年によって道床バラストが劣化したバラスト軌道の低コストな沈下対策として,「生分解性ポリマーを用いたバラスト安定処理工法」を開発したと発表した.
道床バラストが経年で細粒化したバラスト軌道の抜本的な補修方法は,道床バラストを新しく交換する方法であるが,コストが高く,とくに輸送量の低い路線などでは採算性の面から実施が困難であった.そのため,輸送量の低い路線においても適用できる,保守効果が高くて低コストな工法が求められていた.
新たに開発された工法は,経年で細粒化した道床バラストに生分解性ポリマーと反応促進剤を混入することで,道床バラストの強度を高めてバラスト軌道の沈下を抑制する.施工には,バラスト軌道のつき固め保守作業に用いるタイタンパーが使用でき,施工後1時間程度で列車が通行できる.
また,この工法で用いる補修材は,地盤改良材として一般的に用いられており,過度にバラストを固化しないため,通常のつき固め作業による再保守が可能である.さらに,バラスト軌道の沈下はつき固め保守作業により補修されるが,本工法の併用により沈下を抑制して保守の周期を延伸し,維持管理コストも低減することができる.
新工法はこれまでに10ヵ所以上の鉄道現場で試験施工され,道床バラストの細粒化により噴泥が生じていたレール継目部で施工した現場(年間累積通過t数:150万t程度)のケースでは,新工法の施工前は3ヵ月間で約20mm沈下していた.一方,新工法の施工後は2年経過しても約10mmの沈下にとどまっており,通常のつき固め保守作業よりも沈下の進行を抑制していることが確認されている.また,現場では年2回の頻度で通常のつき固め保守作業が必要であったが,新工法の施工から2年間は補修作業を要しなかったことで,維持管理コストを約30%減少できた.
図:生分解性ポリマーを用いた バラスト安定処理工法の施工状況(鉄道総研のニュースリリースから)