ベアリング製造を行なうNTNでは,鉄道車両用「小型密封式車軸軸受ユニット」(複列円すいころ軸受)を開発したと発表した.
車軸軸受ユニットは,車輪が付く車軸に取り付けられ,車体を支持し,一般的にはメンテナンスフリーで60万km以上使用可能な高い信頼性が求められる.車軸には車体重量によるたわみが生じ,車軸の剛性が低く,たわみが大きいと,車軸軸受ユニット部品間に接触部分に振動荷重が加わることで発生する「フレッティング摩耗」が発生する.その摩耗粉が軸受内部に侵入すると,軸受内部の潤滑不良や摩耗,はく離などの不具合につながるおそれがある.車軸のたわみを抑制し,これらの不具合を防止するため,軸方向寸法を短縮した車軸軸受ユニットが要求されている.
また,密封式の車軸軸受ユニットは,外輪に嵌合(かんごう)したオイルシールによってグリースの漏洩を防いでいるが,グリース密封性を確保するために,オイルシールと軸受回転部(内輪,ころ,保持器)の距離を長くすることで,軸受内部の空間容積を確保することが必要であった.このため,オイルシールを軸受幅の外側に配置することになり,車軸軸受ユニットの軸方向寸法の短縮には制限が生じていた.
今回開発された鉄道車両用「小型密封式車軸軸受ユニット」は,シールリップ部にグリースが移動しにくいラビリンス構造を設けるとともに,シールリップ形状を工夫した新しいシール構造を採用している.その結果,オイルシールのグリース密封性の向上と幅寸法を短縮し,オイルシールを軸受幅の内側に配置することに成功した.これにより,車軸軸受ユニットとして従来品と同等の軸受寿命や高速性,グリース密封性などを確保しながら,軸方向寸法を約15%短縮し,摩耗粉の発生につながる車軸のたわみを約30%低減することを可能とした.
写真:NTNのWEBサイトから