三菱電機は,フランス国鉄から,パリ市内・近郊を走行する「Z2N形通勤電車」と,パリ近郊を走行するTram-Train(トラムトレイン)「T4形路面電車」向けの,更新用主変圧器の試作器を各1台ずつ,計2台を受注したと発表した.
フランス国鉄では,TGVや通勤用車両に新造車を調達する一方で,環境に配慮し資源を有効活用するため,老朽化した車両の車体はそのまま流用し,電機品のみをリニューアルする更新工事にも積極的に取り組んでいる.今回の更新工事は,Z2N形通勤電車では変圧器の大幅な軽量化,T4形路面電車では省エネ化,低騒音化,ライフサイクルコストの低減が求められており,三菱電機では,これまで培ってきた車両用変圧器の技術が総合的に評価され,今回の試作器受注に至ったとしている.また,フランス国鉄向け鉄道車両用電機品の受注は三菱電機が日本のメーカーとして初であり,フランス国鉄の電機品サプライヤーとして日本のメーカーで初めて認定された(2017年12月5日現在).
Z2N形通勤電車向けに受注した製品特長は,変圧器巻線にアルミ材を採用し,従来比400kg減の軽量化を達成し,既設装置と同等以上の変換効率を維持しつつ,フランス国鉄の要求以上の400kgの軽量化を実現している点と,既設装置にあわせたインタフェース設計を行ない,車両側の改造を行なわずに容易な更新工事が可能とした点である.
Tram-Train(トラムトレイン)T4形路面電車向けに受注した製品特長は,屋根上設置形変圧器として世界で初めて(2017年12月5日現在)走行風自冷式を採用し,既設装置に対し約50%の電力損失低減に加え,冷却用電動ファンが不要となることで約13dBの騒音低減を実現している点と,絶縁油をタンク内に密封する無圧密封方式の採用により,絶縁油の劣化を防ぎ,無交換を実現している点である.
今後,実際の車両で製品評価が約1年間行なわれた後,量産における仕様が決定される予定で,三菱電機では量産時の受注も目指すとともに,ほかの更新工事を含む欧州市場での鉄道車両用電機品のさらなる拡販をはかりたいとしている.
写真上:「Z2N形通勤電車」,写真下:「T4形路面電車」(三菱電機提供)