〜『鉄道ファン』1987年6月号から〜

拝啓 JRグループの社長さま

JR東海 ノスタルジック・トレイン“つばめ”

1)開発コンセプト
かつての東海道のスターを現在のテクノロジーで再現する.オリエント急行が往年の車両をそのまま使用しているのに対し,“つばめ”用の車両はすべて廃車となっており,内装もオリエント急行ほど豪華ではないため,全車新製とする.昭和初期の登場間もない“つばめ”をプロトタイプとし,全車ダブルルーフの編成とし,もちろん展望車付.台車・サービス機器は外観を損ねない構造としながらも,最新のレベルとする.当時の“つばめ”は輸送力の確保も重要な要素で,2等車・3等車をそのまま再現しては現在のサービスレベルを確保できないため,内装を全面的に更新する.ただし,雰囲気を損ねないようネオクラシカルなデザインとする.もちろんA基準を守りながらも,表面はすべて木の質感を持つものとする.食堂車は厨房車を独立させフルコースも提供したい.運用は,方向転換の可能な三角線の残る東京ー大阪間とするが,主体は東海道本線の大半を受持つ東海会社とする.一日おきに東京と大阪を発車し,昼間の東海道を優雅に走らせたい.区間を定めて復活が決まったスワローエンジェルC62 2号機はもとより,C53も復活させて牽引機とすれば,ファンが大歓迎するばかりでなく,文化的にも評価されるのではないか.蒸気機関車の牽引区間はもちろん,東海会社管内としよう.

JR東海 ノスタルジック・トレイン“つばめ”

2)車両の構想
登場当時の編成は7両であったが,食堂車を充実させるために厨房車を1両独立させ,8両編成とする.各車とも登場当時の車号とするが,内装はグレードをアップする.各車の構成は次のとおり.
①スハニ35450
かつての荷物室は8両の編成にサービス電源を供給する電源エンジンを搭載する.3等車はオープン室構成は生かし,ゆったりした固定式クロスシートとし,窓一つ分シートピッチを伸ばし,1人+2人掛けの配置でヨーロッパのオープン1等車の雰囲気を感じさせる.トイレと洗面所は,防音も兼ねてオリジナルと同じ,荷物室との間に配置する.冷房装置は床下に搭載し,ダブルルーフ構造を利用したダクトにより車両全体に導く.
②スハ32600
室内構造はスハニと同一とする.各車とも客室の仕切引戸は自動扉とする.
③スシ37740
列車の旅のオアシス,食堂車は今回2両連結し,1両は厨房専用車とし,充実した内容のメニューを用意するとともに,シートサービスにも対応する.調理用の電源は自車の床下にディーゼル発電機を搭載する.食堂車の方は,テーブルを2人用と4人用の配置とする.またオリジナルでは厨房にあたる部分をバー様式とし,食堂に対するソフトドリンクや酒類の提供を行なう.
④スロ30750(2両)
オリジナルは転換式のシートであったが,今回はオリエント急行のような優雅な個室の構成とした.一方にはゆったりしたソファベッドを配置し,反対側に1人用のソファを置く.小形テレビによるAVサービスも行ない,退屈しないよう工夫する.
⑤スイテ37020
“つばめ”のシンボルでもある展望車は2・3等車とは異なり,かなり忠実に再現をして,当時の雰囲気を伝える.個室もオリジナルの構成とし,給仕室は,展望室へのドリンク類のサービスを行なう.食堂車とともに3軸ボギーは,現在のテクノロジーならば2軸で十分などと言わずぜひ実現して,C53の3気筒とともにワルツを奏でてほしい.

JR東海 ノスタルジック・トレイン“つばめ” 編成図
JR東海 ノスタルジック・トレイン“つばめ”

3)車両のデザイン
●この車両のデザインはオリジナルの外観をいかに忠実に再現するかで,しかも,外観を損ねずにクーラーをはじめとするサービス機器をいかに装備するかにある.ここらへんが,JR東海の腕の見せどころ!
●インテリア・デザイン
このイラストは3等車をベースとしたオープン室でサイドを木の枠で構成されたクロスシートがポイント.メカニカルなリクライニングシートよりも,この列車にはこのようなシートが似合うし,これだけシートピッチがあれば十分くつろげるであろう.

JR東海 ノスタルジック・トレイン“つばめ” 平面図