本書の写真撮影者の宮松金次郎さんは,戦前を代表する鉄道趣味者のお一人で,本業の会社人としてのかたわらで,鉄道雑誌『鐵道趣味』誌の編集,刊行と,鉄道写真の撮影を目的とした鐵道趣味社を主宰された方でした.そのぼう大な鉄道写真は,関東地方を中心とした国鉄,私鉄,公営鉄道の電車や気動車をはじめ蒸気機関車などなどで,それも形式写真にとどまらず列車の写真,沿線の写真も含まれる,ありとあらゆる分野に及ぶものです.この一大コレクションは戦災にも遭わず戦後を無難に迎えましたが,やがてご本人の逝去とともにご次男がこれを受け継ぎ,後年の整理過程のなかで,今度はご次男が亡くなられるといった不幸が重なり,写真類の一切が散逸の事態に陥ってしまったのです.この事態に危機を感じた各方面の有志の救済策によって,宮松さんがもっとも愛した東京市電,都電の記録が救われたのが,不幸中の幸いなことでした.その記録のほんの一部ながら,このたび写真集として有志によって上梓されたのが,本書です.変貌極まりない東京の,かつての街の中を走る電車の姿をしのんでいただくと同時に,「宮松写真」の真価を,ぜひ平成の時代の皆さんが再認識してください.
著者 | 井口悦男(監修).萩原誠法・宮崎繁幹・宮松慶夫(編) |
発行 | ネコ・パブリッシング |
仕様 | A4判横形(上製) 144ページ |
定価 | 本体8000円+税 |
発売日 | 2015年11月30日 |
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