写真:東武鉄道N100系「SPACIA X」 編集部撮影 南栗橋車両管区にて 2023-4-15(取材協力:東武鉄道)
東武鉄道と日立製作所は,持続的な鉄道事業の確立に向けて車両メンテナンスのDXを推進するため,日立がグローバルに展開するデジタルアセットマネジメントプラットフォーム「HMAX」を活用した協創に取り組むことに合意したと発表した.日本の鉄道事業者が「HMAX」を最大限に活用する,初めての取組となる.
両社は,「車両検査の自動化」,「人の作業の最適化」,「現場力の向上」の3つの観点で,デジタル技術を活用した業務改革を推進することで,現場の課題解決を実現し,持続的な鉄道事業の確立に向けて取り組んでいく.
少子高齢化による労働人口の減少や雇用流動性の高まりなどにより,車両メンテナンスをはじめとする鉄道オペレーションに関わる人材の確保が大きな課題となっている.こうした社会課題に対し,東武鉄道では「持続的な鉄道事業の確立」の実現に向け,デジタル技術の活用による業務効率化により,人が創造的な仕事に注力できる環境づくりを推進することで,社員のスキルとエンゲージメントを向上させつつ生産性を高め,人材の獲得と定着の強化を実現し,鉄道事業の持続性を高めることを目指す.
日立は,AIと自社の豊富な知見を組み合わせ,新たなサービスを提供し社会インフラの変革をめざす「Lumada3.0」を展開している.「Lumada3.0」を体現するソリューション群「HMAX」は,さまざまな分野の課題解決を進めている.鉄道事業においては,列車,信号,インフラ管理を最適化するオールインワンのデジタルアセットマネジメントプラットフォームとして世界で約2000編成・8000両以上に導入されており,日本でのさらなる展開に注力している.
東武鉄道のビジョンの実現にむけて日立のHMAXソリューションを活用し,デジタル技術の活用による業務効率化を両社では進める.業務効率化だけではなく,現場とそこで働く人々に焦点を当てた改革を進めることで,魅力的な職場環境の創出と従業員のスキルとエンゲージメント向上による人的資本の強化を進め,今後も安全・安心・快適な鉄道運行の実現を目指す.
▲車両オンラインモニタリングシステム(Remote)
取組では,検査負荷の低減を図るため,車両の状態をリアルタイムで把握できる「車両オンラインモニタリングシステム(Remote)」や車両外観の異常を自動検知できる「車両外観モニタリングシステム」を活用した次世代型検査を進める.
「車両オンラインモニタリングシステム(Remote)」は,地上と車両間の通信を活用して車両の状態を遠隔で把握し,不具合のリアルタイム検知を可能にするもので,乗車率や運転速度,消費電力などのデータを可視化し分析することで,運行の省エネ化やメンテナンスの効率化を図る.
「車両外観モニタリングシステム」は,車両の屋根・側面・床下などの目視点検を,AI技術の活用によって自動化し,検査業務の負荷低減や検査時間の短縮を図る.
▲チェックイン・チェックアウトシステム
無理や無駄のない業務プロセスを実現するため,ポータル端末と作業者が装着するICタグを連携させ,各作業者のチェックイン・チェックアウト時間などの,取得データを分析し可視化できる「チェックイン・チェックアウトシステム」による業務の可視化を行なう.これにより,作業効率の向上と作業負荷の平準化による生産性向上を図る.
▲車両メタバース
情報共有やコミュニケーション手段の拡充を進め,現場力をさらに高める仕組みを構築する.車両構造や搭載機器の機能,故障・メンテナンス履歴などの情報を入力できる共有プラットフォームの役割を果たす「車両メタバース」などの先端技術により,コミュニケーションの質とスピードの向上に取り組み,業務効率の改善と連携強化を図る.
一部画像は東武鉄道・日立製作所 共同ニュースリリースから











