
叡山電鉄では,リニューアルを進めている700系の最後の2両について,叡山電車開業100周年を記念した新たな観光車両「展望列車『舞』(まい)」として運行を開始すると発表した.
車両形式は,叡山電車の開業100周年を機に「100系」に変更し,101号車+102号車の2両1編成とする,なお101号車は724号車を,102号車は721号車をそれぞれ種車としている.
愛称の「舞」については,「京都や洛北の伝統を映しながら,四季折々の自然のなかを,まるで着物をまとって舞うように旅していただきたい」という想いを「舞」という一文字に込めている.なお,題字は書道デザイナー・林真帆さんによる揮毫である.

▲外装デザイン
外装デザインは,四季折々の移ろいゆく季節を象徴する「花の丸文様」で,叡山電車沿線で見られる花々が織りなす景観を表している.春の桃や桜,夏のアジサイと撫子,秋のモミジや萩,冬の南天が描かれ,四季の彩りを楽しめる.
あわせて,四季をイメージした色彩豊かな「瑞雲文様」,清らかな水の流れを思わせる「流水文様」を配し,沿線に四季の花々が咲き誇るような趣を表現している.自然を愛でる美しい伝統的な和柄で,日本の自然や文化の奥深さを感じられる特別なひとときを提供する.なお,デザイン提供・監修は,叡山電鉄沿線のファブリックメーカーである株式会社川島織物セルコンが手掛けている.

内装デザインは,京都の伝統と文化を象徴する「着物」に着想を得た内装デザインとしている.壁面には伝統柄を淡くあしらい,座席は帯,スタンションポール(握り棒)は簪(かんざし),つり手は髪飾りに見立て,着物を彩る小物をモチーフとしている.床やつり手には木調の素材を採用し,沿線の山々と調和する叡山電車の姿を表現している.
パノラマ感のある窓からは四季折々の風景を楽しむことができ,日常での利用はもちろん,観光目的でも「着物をまとって出かける時のような,明るく心弾む気持ち」を感じられる空間を目指す.なお,本デザインは株式会社IFOOが手掛けている.

▲MAI-SPOTの案内表示
車端(妻)部には,体を休めたい時やスマートフォンの充電など,多目的に利用できるユーティリティスペース「MAI-SPOT(マイスポット)」を設置する.京都・鞍馬山で産出される銘石「鞍馬石」を装飾の一部に取り入れ,洛北との出会いを感じられる工夫を施している.
また,叡山電鉄では初めてとなる案内表示器を設置する.

▲案内表示器の表示イメージ
各車両の車端部付近には,車いす・ベビーカースペース(1ヵ所)を設置し,スペース部の床敷物に明示するほか,優先座席の色を変え,明確化を図る.また,ドアの開閉表示灯,ドアチャイム,触知表示板を新設する.
インバウンドへの対応として,車外の行先表示器は日本語のほか,英語,韓国語(ハングル),中国語(簡体字)の4ヵ国語で表示する.
SDGsの取組として,車内の照明や前照灯,尾灯,行先表示器にはLEDを採用することで,省エネルギー化を図り,二酸化炭素削減を進める.
展望列車「舞」は,2025(令和7)年中のデビューを予定しており,おもに鞍馬線(出町柳—鞍馬間)での運行を予定している.運行開始を前に,八瀬比叡山口駅で9月27日(土)に実施される「開業100周年記念式典」や10月末に開催予定の「えいでんまつり」でのお披露目も予定されている.
画像はすべて叡山電鉄提供