鉄道ファン2025年8月号(通巻772号)
『鉄道ファン』2025年8月号
2025年6月20日発売
特別定価1400円(税込)

京王,2025年度の設備投資計画を発表

京王,2025年度の設備投資計画を発表

▲新形通勤車両2000系の外観イメージ

京王電鉄は,『京王グループ中期経営計画「HIRAKU2030(2025年度~2030年度)」』にもとづき,2025(令和7)年度に鉄道事業において,総額434億円の設備投資を行なうと発表した.

京王9000系(10両編成)

写真:京王9000系  百々貴俊撮影  桜上水にて  2009-7-13

 車両については,最新の省エネ半導体(フルSiC素子)を用いた新形のVVVFインバータ制御装置の採用と,京王電鉄では初となる大形フリースペース(仮称)を5号車に設置した新形通勤車両2000系2本を導入する.9000系2本(20両)については,乗客のさまざまな移動ニーズに対応できるよう,すべての車両にフリースペースを設置するほか,全体の色調を落ち着いた色に統一するリニューアルを実施する.

写真:京王電鉄8000系

写真:京王電鉄8000系  目黒義浩撮影  南平—高幡不動間にて  2020-5-20

 運転用電力を削減するため,より省エネ性能の高いVVVFインバータ制御装置への更新を8000系1本(10両)で実施するほか,9000系のリニューアルでは,最新の省エネ半導体(フルSiC素子)を用いた新形のVVVFインバータ制御装置やSIV装置(車両用補助電源装置)への更新により,さらなる消費電力の削減を図る.さらに,車両機器情報データを活用し,京王線での省エネ運転の導入を進める.
 上り線と下り線のき電線を接続することで,回生ブレーキで発生した電気をほかの電車に最短ルートで送り,電気を送る際の損失低減を図ることができる上下一括き電線化については,京王線 飛田給—北野間で整備を進める.
 このほか照明の省エネルギー化として,新宿駅や府中駅を含む6駅のホーム照明や,西調布駅や京王永山駅のコンコース照明のLED化工事を実施する.

京王,2025年度の設備投資計画を発表

▲京王線(笹塚駅~仙川駅間)連続立体交差事業

 京王線笹塚—仙川間の連続立体交差事業については,引き続き用地取得を進めるとともに,全工区で仮線準備工・高架橋の構築などを進める.
 永福町駅(1・3番線)や高井戸駅などでは,ホームドアの整備とともに,ホームと車両の隙間を縮小するため,ホームドアの整備にあわせて転落防止ゴムの整備を進める.

京王,2025年度の設備投資計画を発表

▲京王線新宿駅改良工事 延伸部のイメージ

 駅改良については,京王線新宿駅の地下2階ホームを東京メトロ丸ノ内線側へ延伸するとともに改札口を新設することで,地下2階のホーム階から東京メトロ丸ノ内線へ乗換え可能な動線などを整備する.これにより,新宿駅西口地下広場における乗換え時間の短縮などを目指す.2031(令和13)年度の工事完了に向け,2025(令和7)年度は既設躯体の解体工事などを進める.

京王,2025年度の設備投資計画を発表

▲京王多摩川駅 改良後のイメージ

 京王多摩川駅前周辺の開発事業にあわせて,京王多摩川駅においてもエレベータ大形化や旅客トイレ改修のほか,ホームドア整備やホームと車両床面の段差隙間の縮小など,バリアフリー機能を強化する駅改良工事を実施する.2026(令和8)年度の供用開始に向けて,2025(令和7)年度はホームドア整備や駅事務室の改修などを進める.
 渋谷駅では,バリアフリールートの2ルート目の2026(令和8)年度の整備完了を目指し,2025(令和7)年度は既存設備の移設や撤去,エレベータピットの新設などを進める.

京王,2025年度の設備投資計画を発表

▲左:自動運転設備搭載の運転台/右:自動化のレベル

 自動運転設備を活用したワンマン運転については,井の頭線で2020年代後半,京王線で2030年代中ごろの導入を予定しており,実施中の井の頭線での自動運転実証試験を踏まえ,2025(令和7)年度は,井の頭線の車両設備や地上設備の導入・改修を進める.

京王,2025年度の設備投資計画を発表

▲左:現場機器構成/右:モニタリング画面

 目視による列車の点検を屋根上や床下に設置されたカメラで撮影した映像による点検に置き換え,映像から要点検箇所をAIにより抽出し,異常の有無を自動で判定することによって,作業の安全性や点検精度の向上,省力化を実現するシステムの構築を進める.2025(令和7)年度は,AIの精度の検証や撮影データの収集などを進める.また,新たな案内システムとして,駅におけるAIアバターや遠隔によるご案内システムの導入などに向けた検討を進める.

京王,2025年度の設備投資計画を発表

▲左:エリア検知式の障害物検知装置/右:踏切道AIカメラ映像のイメージ

 大規模地震に備え,高架橋や盛土区間,電線を支持しているコンクリート柱を地震に強い鋼管柱に更新する耐震補強工事や,線路脇法面の改修工事を引き続き実施する.
 踏切における安全対策では,井の頭線明大前2号踏切道,西永福3号踏切道,東松原4号・5号踏切道,下北沢1号踏切道において,精度の高いエリア検知式である障害物検知装置の新設工事を行なう.また,踏切道に新たにカメラを設置し,記録された映像をAI解析して不審者の踏切侵入前の監視に活用することで,踏切事故の未然防止につなげる.

一部画像は京王電鉄ニュースリリースから

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