
写真:JR四国2700系 編集部撮影 多度津工場にて 2019-1-23(取材協力:JR四国)
JR四国は,2025(令和7)年度の事業計画を発表した.
2025(令和7)年度は,景気はゆるやかな回復基調で推移すると見込まれるものの,物価動向や海外情勢の影響による経済の不確実性など,経営環境は不透明な状況が続くと想定される.このような中にあっても,「中期経営計画2025」の集大成であり,更なる飛躍を目指す年度と位置づけ,各種施策に取り組む.
「鉄道事業における収益拡大施策の推進」では,鉄道運輸収入の安定的な確保を目的に,2025(令和7)年2月,サンポート高松地区に開業した香川県立アリーナでの各種イベントの開催や,4月の大学開校により人流の増加が見込まれることから,適宜臨時列車の設定や車両の増結を行なうなど,非鉄道事業とあわせ需要を確実に取り込む.また,2025(令和7)年3月のダイヤ改正で実施したパターンダイヤ導入区間・導入時間帯の拡大や,伊予大洲駅・八幡浜駅構内設備改良,繁忙期における特急“しおかぜ”・“南風”の指定席拡大,列車内での乗車券類購入へのバーコード決済導入などにより,利便性の向上と利用促進を図る.より便利で快適な鉄道輸送サービスの提供に向け,8000系特急電車,1200形気動車のリニューアル工事などを進める.

写真:JR四国8000系リニューアル車 編集部撮影 多度津工場にて 2023-12-5(取材協力:JR四国)
チケットアプリ「しこくスマートえきちゃん」については,ブランディング・プロモーションを一新するとともに価格や利便性の側面からの訴求を強化し,定期券更新時期における集中的な告知展開などとあわせて,定着と利用拡大を図る.「e5489」を中心とした非対面販売や「みどりの券売機プラス」も含め,これらを一体的にPRする「JR四国スマート改革」キャンペーンを継続して実施する.チケットアプリについては,将来的な「MaaS」構想も念頭に,ほかの交通事業者との連携を進める.
観光需要拡大に向けた営業施策では,「瀬戸内国際芸術祭 2025」,「大阪・関西万博」,「NHK 連続テレビ小説『あんぱん』放映」,「アンパンマン列車運行開始25周年」といった社内外の行事・イベントを契機とした各種施策を実施し,四国への誘客促進や観光需要の拡大を図る.

写真:JR四国キハ185系「伊予灘ものがたり」 編集部撮影 多度津工場にて 2022-2-21(取材協力:JR四国)
観光列車については,飲食メニューやグッズや車内サービスのブラッシュアップを進めるほか,特別企画や各種記念イベントを実施し,ものがたり列車の高付加価値化によるブランド力を強化する.「藍よしのがわトロッコ」においても,貸切・特別運転の拡充により,さらなる魅力度向上に取り組む.加えて,列車と着地素材・宿泊などをセットにしたユニット商品の旅行会社への販売強化,観光列車を通じた四国の魅力の幅広い情報発信により流動を拡大する.
鉄道の速達性や定時性を活かした,新たな荷物輸送サービスの実施に向けた検討を行なうとともに,「サイクルトレイン」の混乗試験の継続実施など,鉄道の輸送力を活用した新たなサービスによる収益源の多様化や利用促進を図る.

写真:JR四国1500形 編集部撮影 高松運転所にて 2006-4-24(取材協力:JR四国)
「構造改革の加速」では,持続可能な経営体質の構築に向け,多度津工場の近代化やハイブリッド式ローカル車両の導入,ワンマン運転の拡大・定着,土木構造物検査システムの導入など,支援措置を活用した設備投資による省力化・省人化施策を着実に進めることで生産性の向上を図る.
地域の関係者と一体で将来のあるべき交通体系の構築に向けた建設的な議論・検討を進めるとともに,「5カ年推進計画 2021~2025」の総括検証と事業の抜本的な改善方策の検討を行なう.また,「MaaS」の考え方のもと,鉄道やバスなどが特性を発揮し,有機的に連携した利便性の高い移動を提供できるよう,パターンダイヤのさらなる拡大や,地域の関係者と一体となったモビリティ間の連携,交通結節機能の強化などの具体的取組を進めることで「公共交通ネットワークの四国モデル」を追求する.
まちづくりとの連携では,駅周辺の活性化と交通結節機能強化に向け,松山駅周辺のまちづくりについて愛媛県・松山市とともに検討を進めるとともに,徳島駅周辺の高架化・まちづくりについても徳島県などとの協議・検討を継続する.また,自治体と連携して,駅前広場や駅舎などの駅周辺整備について検討・整備を進める.
「非鉄道事業における最大限の収益拡大」では,「高松オルネ」,「JR松山駅だんだん通り」の運営力向上や,販促による誘客と継続的なリーシングに取り組むほか,旧研修センター跡地や高知外資系ホテルの開発を確実に進める.
詳しくは,「JR四国グループ事業計画2025/2025年度事業計画」に掲載されている.