鉄道ファン2025年5月号(通巻769号)
『鉄道ファン』2025年5月号
2025年3月21日発売
定価1300円(税込)

JR東海,2025年度の重点施策を決定

JR東海 N700S量産車

写真:JR東海N700S量産車  目黒義浩撮影  小田原—熱海間にて  2020-10-25

JR東海は,2025(令和7)年度の重点施策を発表した.

 生活様式や働き方の変化によりニーズが多様化していることや,労働力人口の減少により,業務のあり方の変革が求められていることなど,環境の大きな変化を踏まえ,2025(令和7)年度は,AIを含め最新のICTなどの技術を活用して効率的な業務執行体制を構築する「業務改革」と新しい発想による「収益の拡大」の2点を柱とした経営体力の再強化に取り組むものとし,設備投資額は連結で7350億円,単体で6660億円を計画している.
 鉄道事業においては,災害対策をはじめとした安全対策を着実に進めるとともに,東海道新幹線では「N700S」を7編成投入し,新たな営業車検測機能を有する「N700S」の追加投入に向けた詳細設計を進める.ホーム上の可動柵については,新幹線全駅への可動柵整備に向けて,調査設計を進める.
 「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)に対応した輸送を実施するとともに,「のぞみ12本ダイヤ」を活用して,需要にあわせた弾力的な列車設定を行なう.

JR東海,2025年度の重点施策を決定

▲通勤形電車315系

 在来線では,通勤形車両315系56両を追加投入する.“しなの”・“ひだ”などの特急列車は,需要にあわせて弾力的に増発や増結を行なうほか,新形特急車両385系量産先行車の新製に向けた詳細設計を進める.
 設備関連では,東海道本線 刈谷駅のホーム拡幅と可動柵の設置などに向けた工事や,武豊線 半田駅と東海道本線 沼津駅付近の連続立体交差化に向けた工事を進める.名古屋駅で中央本線ホームへの可動柵の設置工事を進める.駅におけるバリアフリー設備の整備について,国や関係自治体とともに進める.車両側面にカメラを設置した315系(4両編成)に,乗客の接近などを検知する画像認識技術を活用した安全確認支援装置を搭載し,ワンマン運転を開始する.

JR東海,2025年度の重点施策を決定

▲新形特急車両385系量産先行車のデザインイメージ

 TOICAエリアや「お客様サポートサービス」の導入駅を拡大するとともに,特急“ひだ”を対象とするチケットレス化を行なう.また,2026(令和8)年春以降のモバイルICサービスの導入に向けた準備を進める.
 技術開発などについては,地震発生時に列車を早期に停止させるためにブレーキ力を強化するなど,地震に対する安全性を高めるための技術開発を進める.豪雨時における最適な運転規制に繋げるために,営業線盛土の一部区間において降雨時の土中の水の分布を詳細に把握するモニタリングを実施し,盛土の性能評価を行った上で対策工法を検討するなど,豪雨に対して安全性を最優先に安定性も高めるための技術開発を進める.車内通信環境の整備など,サービスの充実に資する技術開発を進める.
 状態監視技術などを活用した検査や保守の高度化・省力化,設備の維持更新におけるコストダウンなどによる「業務改革」に向けて,社内横断的に課題解決に取り組む.特に,AIやデータ・画像分析技術などは,業務に最適な形で導入するための準備を進める.グループ会社を含めて,労働力人口の減少などに対応するため,ロボット制御などの先端技術の活用を進める.

JR東海 L0系改良形試験車

写真:JR東海L0系改良形試験車  目黒義浩撮影  山梨リニア実験センターにて  2020-10-19 (取材協力:JR東海)

 超電導リニアによる中央新幹線計画については,用地取得や山岳トンネル,都市部トンネル,駅などの土木を中心とした各種工事を進める.このうち駅については,山梨県駅(仮称)の工事に着手し,品川—名古屋間のすべての駅で工事を進める.また,関東車両基地(仮称)の造成工事や中部総合車両基地(仮称)の建築工事に着手する.南アルプストンネル静岡工区については,国土交通省の有識者会議の水資源に関する報告を踏まえ,引き続きトンネル掘削工事の早期着手に向けて,地域の理解と協力を得られるよう,双方向のコミュニケーションを大切にしながら取り組む.

JR東海,2025年度の重点施策を決定

▲新しいL0系改良形試験車のイメージ

 山梨リニア実験線では,高温超電導磁石の営業線への投入を前提に,さらなるコストダウンや安定運用に向けた検証を進める.ICTなどの最新の技術を活用した効率的な運営体制の実現に向けた開発では,AIによる画像やビッグデータの分析システムの改良・実証などを進める.新しいL0系改良形試験車を投入し,それにより得られるデータも活用しながら営業車両の仕様策定を進め,設計を深度化する.
 走行試験を着実に行なうなかで,高付加価値なサービスの追求するとともに,さまざまな形で超電導リニアの体験乗車を実施し,中央新幹線の開業に向けた期待感の醸成に取り組む.
 高速鉄道システムの海外展開については,米国における高速鉄道プロジェクトについて引き続き取り組む.台湾での高速鉄道については,「N700S」をベースとした新形車両導入や各種設備更新にともなう技術コンサルティングを進める.また,日本形高速鉄道システムを国際的な標準とする取組を進める.

JR東海,2025年度の重点施策を決定

▲水素動力ハイブリットシステムの構成

 持続可能な社会の実現に向けた取組みの一環として,模擬走行試験を通じて,水素動力車両(燃料電池車,水素エンジン車)に関する開発を進める.また,蓄電池車やカーボンニュートラル燃料について,調査研究を継続する.
 関連事業については,JR東海グループの駅商業施設で利用できる共通ポイントサービス「TOKAI STATION POINT」について,データマーケティングの強化を進め,グループ事業と鉄道事業の双方の収益拡大を図る.JRセントラルタワーズとJRゲートタワーなどの駅ビル事業では,店舗の品揃え強化やサービス向上に加え,開業25周年記念キャンペーンなどを実施する.また,東京駅・名古屋駅などの駅商業施設を拡張・リニューアルする.
 詳しくは,JR東海ニュースリリースに掲載されている.

一部画像はJR東海ニュースリリースから

このページを
シェアする