日立製作所のグループ会社である日立レール社は,英国のトランスペナイン・エクスプレス社(TransPennine Express),エンジェル・トレインズ社(Angel Trains)と共同で,新形バッテリシステムをインターシティ車両に搭載し,性能試験を実施すると発表した.これは,インターシティ車両でディーゼルエンジンをバッテリに交換する英国初の試験となる.
最大出力700kWを超えるこのバッテリは,トランスペナイン・エクスプレスの「Nova1」(5両編成のインターシティ車両クラス802)に搭載され,2024(令和6)年夏にトランスペナインの路線で試験走行が開始される予定.このバッテリユニットは,単体で75世帯以上の住宅に1日分相当の電力を供給することができる大変強力なものとなっている.エネルギーと出力密度は,置き換えられるディーゼルエンジンとほぼ同じ重量で,同様の加速性などの性能を持つ.
バッテリの搭載により排出ガスを削減するとともに,エネルギー効率が向上する.また日立のインターシティ車両においては,排出ガスと燃料コストを最大30%削減できるとしている.
非電化区間では,インターシティ車両が排出量ゼロのバッテリモードで走行できるようになり,大気環境が改善され,騒音も軽減される.
このバッテリは,サンダーランドのターンタイド・テクノロジーズと共同開発し,イングランド北東部で発展してきたバッテリ産業のノウハウが活用されている.
試験は,インターシティ車両がバッテリ100%の力で100kmまで走行できる実例となる.走行距離が長くなることにより,このバッテリ技術が今後数年でインターシティ路線の終点近くに多く存在する非電化区間に採用される可能性が大きくなるとしている.また,トンネル区間や複雑な分岐点上の架線を減らすことで,バッテリ技術がインフラコストを削減できることも実証する.
クラス802を所有するエンジェル・トレインズは,日立の製品への投資が,イングランド北東部や鉄道業界全体に利益をもたらす非常に重要なものであると考えており,民間セクターが最先端技術に投資することは,英国の鉄道の成功に不可欠であるとした.
今回の試験とバッテリ車両により,鉄道が英国内のバッテリ需要を拡大させ,2040(令和22)年までに英国でのバッテリ産業全体で10万人を雇用するという英国政府の目標達成に寄与する.
画像:日立製作所提供