鉄道友の会は,東武鉄道N100系を2024年のブルーリボン賞に,宇都宮ライトレールHU300形と大阪市高速電気軌道400系を2024年のローレル賞に選定したと発表した.
東武N100系は,浅草と日光・鬼怒川エリアを繋ぐ新形特急車両で,100系「スペーシア」が長年築き上げてきた伝統を維持・継承しつつ,時代の流れに合わせて進化した上質なフラグシップ特急である.
エクステリアは,現代のデザインに進化させるとともに,両先頭車に組子や竹編み細工などの伝統工芸品を連想させる窓枠構造が取り入れられている.また,インテリアは江戸文化の象徴(グリ紋や組子柄)をデザインアクセントとして,色彩計画「四十八茶百鼠」をヒントにカラーアソートを加えた構成となっている.
同社のフラグシップ車両に相応しい存在感溢れる外観フォルムや,現代トレンドと江戸・日光の歴史文化を融合させた秀逸なデザイン,多彩なバリエーションを誇る機能美に優れた客室設備,最新および実績のある機器類をバランスよく配し,安定した走行・運用を実現するなど,多くのファクターが高い水準でまとめられた車両であり,会員からも高い支持を得たことから選定された.
宇都宮ライトレールHU300形は,全線新設のLRTとして国内初となる芳賀・宇都宮LRTの車両で,17編成51両が新製された.100%低床式のライトレール用の車両で,3車体・3台車の連接車構造となっている.
1997(平成9)年以降,熊本市交通局や富山ライトレールなどに導入されてきた,旧アドトランツ・タイプの車両構成を基本としているが,都市交通の新たな形を志向して開業する,同路線向けの新たなデザインとなっている.
エクステリアは,「雷都を未来へ」をコンセプトとし,一般アンケートの結果を受けたデザインで,黄色を基調とした斬新なものとなっている.車両前面には大形曲面ガラスを採用して前方運転視界を確保している.
インテリアは,間接照明,ヴォールト天井,大形側面窓などを採用し,車体幅を超低床式車両としては最大の2650mmとし,一般鉄道並みの座席幅450mmを確保して,利便性と快適性を高めている.また,IC乗車券を使用すれば,すべての扉から乗降が可能なように,乗車用・降車用のリーダーを各扉の左右に設け,利便性や乗降時間の短縮を図っている.
本車両は,新規開業のLRT路線における,インパクトのあるデザインの車両であることから,社会的にも大変に注目されるとともに,次世代のLRTを期待させるポテンシャルの高さが評価された.なお,会員投票でも1位とほぼ同数の1000票を超える60%以上の支持を受けたとしている.
ただし,本車両が次世代のLRTを志向するためには,駅などの地上側設備や乗車券システム全体の改良など,信用乗車の今後に向けた検討や,高速域での走行安定性に改良の余地について,今後の改善努力が望まれるとした.
大阪市高速電気軌道400系は,中央線の夢洲駅延伸と「2025年日本国際博覧会(EXPO2025 大阪・関西万博)」開催にともなう旅客輸送を担う目的で,経営形態を変更してから初めて導入された車両で,2025(令和7)年4月までに6両編成23本が揃う予定.
外観は,輸送目的に沿って未来への路線と位置づけ,宇宙船を意識させるデザインとしている.車体はアルミニウム合金製で,摩擦撹拌接合を用いたアルミダブルスキン構体であり,特徴的な先頭構体は,3次元削り出し加工により高精度かつ曲線美を実現している.
車内は,側出入口間で向かい合う座席配置を線路方向にずらすことで,座席定員と大形荷物を持った乗客などが利用しやすい空間をそれぞれ確保する要件を両立させている.
選考委員会では,400系が既存系列の車両とは一線を画すデザイン性と多様な需要に応える設備を兼ね備えた車両であると評価した.