JR東海は,新幹線の高速走行中に検査可能な新しい架線検査装置として,「架線三次元検測装置」と「電車線金具異常検知装置」を開発したと発表した.
東海道新幹線では,列車の安定輸送にとって重要な架線の維持管理のために,「ドクターイエロー」による検測のほか,日々の沿線徒歩巡回などにより架線の外観検査が実施されている.今回開発された装置は,この外観検査について,検査の高頻度化並びに今後の労働力不足を見据えた省力化することを目的としたもので,時速300kmまでの高速走行中に,架線同士の位置関係や電車線金具といった架線の細部にわたって検査できる国内初の技術となる.
「架線三次元検測装置」は架線の位置関係を三次元的に測定するもので,ラインセンサカメラでの撮影に加えて,測域センサから照射されるレーザで架線同士の位置を追跡することで,架線の正確な位置関係を再現し,架線交差部などの複雑な位置関係を検測できる手法を実現している.これまで,架線の高さや架線同士の間隔を人が器具で現地測定したものを,自動で判定することが可能となる.
「電車線金具異常検知装置」は,ちょう架線とトロリ線の間にあるハンガやコネクタなどの金具の画像を撮影し,AIを用いて,金具の変形や破損などの異常を自動で検出するもの.
今回開発された装置で取得したデータを,今後整備するミリ波方式列車無線で伝送することで,架線の状態変化を早期に発見し,タイムリーな保守作業が可能となる.今後は,装置の長期耐久性など営業列車への搭載に向けた検証とさらなる精度向上を行ない,ミリ波方式列車無線が運用開始される予定の2027(令和9)年以降に活用する見込み.