JR東日本と日立製作所は,共同で開発したフルデジタル変電所システムを,2025(令和7)年度以降に導入すると発表した.
現行の保護・制御システムは,変電所構内で受け渡しを行なう情報を,1情報に対し1本のメタルケーブルを必要とする構成としていたため,二重化するには同じ設備を設ける必要があり,実現が困難となっていた.
フルデジタル変電所システムは,光デジタル通信の活用により,ネットワーク装置から現場ユニットまでの多くの情報を1本の光ケーブルで送ることが可能になり,二重化を容易にできる.JR東日本と日立では,共同で変電所のシステム構成や運用方法の検討を行なうとともに,JR東日本の変電所に試験用機器を設置し,実際の環境下で通信状況の確認する「フィールド試験」を実施し,実用化の目途がたったことから,運用設備への導入を決定した.
フルデジタル変電所システムでは,変電所構内の伝送路と保護・制御機能の完全二重化を実現する.そのため,変電所構内において一方の設備で故障が発生しても,もう一方の設備で継続的な稼働が可能となる.これにより,従来以上に電力を安定供給することが可能となる.
本システムでは,監視操作盤・保護リレー盤を,日立が開発した統合ユニットに集約・小形化することで,盤の数量を大幅に削減できる.また,ネットワーク装置から現場ユニットまで大量の制御ケーブルを必要としない光デジタル通信を採用することで,制御ケーブルを約9割削減することが可能となった.これにより,省スペース化と工事の省力化を図る.
さらにJR東日本は,本システムに国際規格「IEC61850」を適用することで,機器調達リスクを低減し,事業継続性を確保する.なお,「IEC61850」を適用したデジタル変電所システムの導入は国内鉄道事業者では初めてとなる.
システムは2025(令和7)年度以降,小岩交流変電所に導入する.具体的には,2024(令和6)年度から順次機器を搬入し,2025年度に22kV設備を使用開始し,2026(令和8)年度に22kV旧設備の撤去と66kV設備の機器搬入し,2027(令和9)年度に66kV設備の使用を開始する予定.
一部画像はJR東日本提供