JR東日本は,日本初の鉄道が開業した時の構造物である「高輪築堤跡」について,2027(令和9)年度の現地公開を目指すと発表した.
高輪築堤は,1872(明治5)年に日本初の鉄道が新橋—横浜間に開業した際,高輪海岸沿いの海上に鉄道を走らせるために敷設された鉄道敷の遺構で,発掘調査の結果,第7橋梁の橋台を含む開業当初の高輪築堤の遺構が残っていることが判明した.
JR東日本は,考古学・鉄道史などの有識者や文化財行政で構成された高輪築堤調査・保存等検討委員会で,2021(令和3)年4月に取りまとめた調査・保存方針にもとづき,記録保存調査を進めてきた.
日本の交通の近代化や当時の土木技術などの歴史を知る上で重要な遺跡とされることから,2021(令和3)年9月に第7橋梁部と公園部が,すでに指定されていた「旧新橋停車場跡」に追加する形で「旧新橋停車場跡及び高輪築堤跡」として史跡指定されている.
国の史跡に指定されたことを踏まえ,2021(令和3)年12月から「『史跡旧新橋停車場跡及び高輪築堤跡』における高輪築堤跡保存活用計画等策定・検討委員会」が開催され,そのなかで,さまざまな分野の有識者や文化庁,東京都,港区の文化財行政による検討内容のもと,高輪築堤跡の保存活用計画を策定し,2023(令和5)年5月に文化庁長官の認定を受けている.
高輪築堤を構成する杭や築石の腐朽・塩類析出対策などの保存科学や高輪築堤の構造安定性などについて,有識者の指導のもと技術的な検討と適切な保存対策や継続的な維持管理を行なうことで,高輪築堤跡の現地公開が可能となった.高輪築堤跡保存活用計画の詳細や委員会の議事要旨は,JR東日本WEBサイト内で公開する.
高輪築堤跡の保存・公開については,発掘時にすでに滅失していた欠損部築石,盛土,バラスト,レール,橋梁などの再現を検討するとともに,かつての築堤ライン上は,現地で発掘された築石を活用したランドスケープとし,歴史を感じる空間を創出する.
ARやVRなどの最先端技術を活用した開業当時の鉄道が走る景観の再現など,高輪築堤を含めた地域資源などを知るきっかけになるような取組を検討する.高輪築堤も含めた鉄道開業当初の新橋—横浜間(約29km)の記録について,史資料調査や研究成果の収集・整理を行ない,今後の史跡の公開や活用に活かす.史資料調査や記録保存調査により得られた知見を踏まえ,高輪築堤や鉄道の歴史を国内外へ発信する情報発信施設などを整備する.
現地公開時期は,2027(令和9)年度を予定している.今後,周辺のまちづくり工事などの進ちょく状況も踏まえつつ,有識者の指導のもと検討を進め,遺構の保存と公開に向けた整備などを進める.具体的な時期については決まり次第,発表される.
画像はいずれもJR東日本提供
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