JR四国は,2022(令和4)年春から運転を開始する予定の新たな「伊予灘ものがたり」について,その概要を発表した.
新たな「伊予灘ものがたり」は,既存のキハ185系3両を改造する.列車コンセプトを「レトロモダンな車内で大切な人と過ごす,上質な非日常空間」とし,愛媛県のこだわりである食,景色,伝統工芸や,人々の温かさにふれる,ここにしかない「鉄道旅—ものがたり—」を楽しむものとする.
現車両のデザインを継承しつつ,より快適な空間を提供できるよう設備面でのブラッシュアップを図る.観光スポットでもある松山・大洲・八幡浜に残る明治から昭和の遺構と調和する「レトロモダン」をコンセプトに,和と洋を織り交ぜたデザインの面白さや懐かしさを演出する.
エクステリアは,伊予灘の夕景をモチーフとしたシンボルマークや茜色と黄金色のカラーリング,側面に大きく描かれた和デザインのヱ雲(えぐも)などを引き継いだ外装とする.また,より夕日の光に映えるよう,JR四国の車両で初めて全面にメタリック塗装を施した車両となる.
1号車「茜の章」は,定員27名のグリーン座席で,海向き展望シートと4人掛けボックスシート,山側に2人掛けシートを設置する.2号車「黄金(こがね)の章」は,定員23名のグリーン座席で,海向きの展望シートと2人掛けシート,山側に2人掛けシートを設置する.ものがたりの一編を表した号車愛称や室内イメージは現車両のデザインを踏襲し,ガラス窓の間は障子の明かりに見立てたLED照明として,開放的な和空間のイメージを演出する.和デザインに対比する洋風の椅子は,テーブルとともに現行車両からサイズアップする.
現行の2両から1両増える3号車「陽華(はるか)の章」は定員8名のグリーン個室「ラグジュアリールーム」となる.「大切な人と過ごす時間と空間」をテーマとし,2人掛けソファーシート4席とすることで,家族や少人数グループでの旅行のほか,誕生日や結婚記念日などの特別な日に利用できる個室空間とする.
このほか,各車両の電球形照明は「みかん」をモチーフにしたデザインとし,車内にみかんが実ったようすをイメージしている.各号車の障子に模した照明と1・2号車の天井間接照明,3号車のテーブル照明は,夕日をイメージしたオレンジの明かりに切替えを可能とし,「道後編」(後述)で夕景にあわせた照明の演出を検討している.1・2号車の天井間接照明と3号車のテーブル照明はフルカラーにも対応しており,貸切イベントなどでさまざまな照明演出にも対応する.
上記以外の車内設備として,各車両に車内モニタのほか,フリーWi-Fiや座席ごとのコンセントを設置する.トイレは多目的トイレ1ヵ所,洋式トイレ2ヵ所(1ヵ所は女性専用)となる.洗面台洗面鉢や車内使用食器などは引き続き,砥部焼女性作家グループ「とべりて」の作品を中心に,愛媛県の伝統工芸品「砥部焼」を車内で活用する.車内で提供する各編の食事についても,これまで「伊予灘ものがたり」の食事を担当した店舗が引き続き担当する.食事内容の詳細は,決まり次第発表される.
運賃・料金は,車両リニューアルにともない特急料金を適用するほか,新たな特急グリーン料金とグリーン個室料金を設定する.1号車「茜の章」と2号車「黄金の章」は全車グリーン車指定席とし,乗車券に加え,特急券とグリーン券が必要となる.
2021(令和3)年10月時点で検討されている料金は,松山—伊予大洲間で3670円(運賃:970円+特急料金:1200円+グリーン料金:1500円),松山—八幡浜間で4000円(運賃:1300円+特急料金:1200円+グリーン料金:1500円)としている.なお3号車「陽華の章」に乗車する場合は,利用人数分の運賃料金のほか,グリーン個室1室料金28000円が必要となる(定員8名,2名以上で利用可能).
画像はいずれもJR四国ニュースリリースから