公益財団法人鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は,担当者による手計測や専用特殊車両による測定なしに,線路近傍設備が車両の走行に影響するかを簡易的かつ連続的に調べることができる,建築限界支障判定装置を開発したと発表した.
列車運行の安全を確保するために,設備などが列車に支障してはならない領域として「建築限界」が定められており,鉄道事業者は,建築限界を支障しないように設備の設置を行ない管理する必要がある.これまでは,対象設備との距離を,現地で担当者がメジャーなどを用いて手検測を行なうか,建築限界測定用の特殊車両を用いた測定(特殊車両検測)によって判定していた.しかし,手検測作業では時間的・人的コストが大きく,特殊車両検測では,特殊車両の導入が必要という課題があった.
本装置は既存の軌道検測車に取り付けることで,通常の軌道検測とあわせて建築限界支障判定ができる.レーザーの反射時間で,信号や踏切設備など線路近傍設備との距離を測定する「レーザー測域センサ」を用いて,線路近傍設備までの距離を連続的に測定する.これにより,建築限界支障の判定を昼夜問わず行なうことができる.また80km/h程度の走行速度で検査が可能なため,迅速な判定作業も可能となっている.
管理ツールは,測定されたデータを自動で設備管理台帳と照合し,建築限界の支障状況などを確認した結果を出力する機能や,任意の線路近傍設備との距離を確認する機能を有している.これまでは,担当者が現地で手検測により建築限界支障を確認していた対象設備のうち75%程度の設備について,本装置により設置位置を問題なく確認できるとしている.
装置は,2021(令和3)年4月からJR九州で運用されており,在来線の信号機,標識,器具箱,電化柱などの約18万点の地上設備の管理に使用されている.なお,測定データは3次元データとして得られるため,軌道の断面形状なども測定できることから,軌道中心間隔の測定などへの適用も検討していく.
画像はいずれも鉄道総研ニュースリリースから