鉄道総研,240km/hの列車に対しミリ波による高速データ伝送に成功

JR西日本W7系

実験は北陸新幹線富山—金沢間で行なわれた.
写真:JR西日本W7系  編集部撮影  白山総合車両所にて  2014-6-22(取材協力:JR西日本)

鉄道総合技術研究所と株式会社日立国際電気,国立研究開発法人情報通信研究機構(以下NICT)は,時速約240kmで走行する列車と地上間において,ミリ波(90GHz帯)無線通信システムによる毎秒1.5ギガビットのデータ伝送実験に世界で初めて成功したと発表した.

 スマートフォンやタブレットとインターネットの普及により,高速のインターネット環境を場所と時間を問わずに利用したいという社会ニーズが顕在化し,高速走行する列車と地上間の高速通信環境の実現に向けた研究開発は各所で実施されている.最近では旅客サービス以外にも,走行車両内の防犯カメラ映像や営業車による軌道検測などで必要とされる大容量データ伝送手段として,ミリ波帯通信技術への期待も高まっている.ミリ波帯は,利用可能な帯域幅が広く毎秒ギガビット級の超高速無線通信を可能とする一方で,その信号生成・増幅の困難さが課題であった.近年は半導体技術が進歩し,それによりミリ波帯デバイスは実用の段階に入りつつある.ミリ波は,周波数の高い信号であるため,伝搬減衰が大きく中長距離の回線設計は困難となっていた.また,モバイルネットワークを使用して新幹線などでの高速移動中においても通信環境を向上させようという取組みもあるが,これは基地局を次々と切り替えていく操作(ハンドオーバー)が頻繁に必要となり,実効的な通信速度を確保するのが困難であるという課題があった.

実証試験システムの概要

実証試験システムの概要

 今回の実験では,鉄道車両が軌道上を規則正しく走行するという特性に着目し,無線エリアを軌道沿いに構築するシステムを開発.モバイルネットワークのようにセルが二次元的に並ぶのではなく,一次元の線状にセルを構成する方式を採用することで,ミリ波信号を必要なところまで光ファイバで低損失に届け,必要最小限の距離を無線信号で伝えることが可能となった.システム構成および地上無線局の配置については鉄道総研が中心となり開発し,日立国際電気とNICTは,無線信号を光信号に変換し,低損失に光ファイバ伝送するファイバ無線(RoF)技術を開発した.地上無線局と中央制御装置はRoF技術で接続し,列車の移動に合わせ自動的に無線エリアを切り替えるシステムを構築.北陸新幹線(富山—金沢間)の地上の機器室に中央制御装置,線路脇の電化柱に地上無線局(約2km区間に4局),列車の後部運転席内に車上無線局とする構成で設置し,走行試験を行なった.その結果,時速240kmで走行する列車と地上に設置した中央制御装置間で現行の高速鉄道で利用されている対列車通信システムの750倍となる毎秒1.5ギガビットの大容量データ通信を地上無線局切替え時のハンドオーバーなしで実現できることが確認された.

運転席内映像を中央制御装置で受信している様子

写真:本システムで車上の映像信号を地上の中央制御装置に伝送した際の様子.
後部運転席に設置したカメラが撮影した動画がリアルタイムで伝送されている.これにより,車上の防犯カメラ 映像などを地上へ,リアルタイム伝送できる可能性が示された

 今後は,今回基本技術を確立したミリ波通信とRoF技術を活用した高速鉄道システムに適した新しい無線通信システムを実用化するため,さらなる技術検討と並行し,国際電気通信連合(ITU)において本実験に用いた周波数帯を含む,92.0-109.5GHzの鉄道無線応用に関する国際標準化活動を推進していく.また,鉄道・航空などインフラ向け電波システム海外展開の一環として国内外の共同研究機関と協力し積極的な展開に取り組む予定.

特記以外の写真は鉄道総研のニュースリリースから