JR貨物は，青函トンネルの新幹線共用走行区間の訓練などが可能な「EH800形式交流電気機関車 運転士異常時対応訓練用シミュレータ」を導入したと発表した．
　同社では，運転士の知識，技能と異常時対応能力の向上を図るため定期的に訓練を実施しているが，その内容は，実際の車両を使用しての実地教育・講義を中心とした机上教育や訓練用シミュレータを使用した体験教育などが中心である．訓練用シミュレータは現在全国に6ヵ所配置しているが，北海道新幹線との共用走行区間は，通常の在来線と異なる運転取扱いが必要なことから，今回新たに開発された．
　シミュレータは2018（平成30）年6月から，北海道支社の五稜郭機関区と東北支社の青森総合鉄道部に各1台ずつ配置され，導入に際しては，従来のシミュレータに加えて，走行区間の特性にあわせた機能が新たに追加されている．
　訓練が可能な区間は，津軽線の蟹田—新中小国信号場間，海峡線の新中小国信号場—木古内間，道南いさりび鉄道線木古内—札苅間で，同区間で使用している4つの保安装置（ATS-SF・ATS-PF・ATS-Ps・DS-ATC）にも対応している．なお，新幹線共用走行区間で使用している「DS-ATC」については，個別の機能であるRS-ATC・構内ATC・非常運転モードにも対応している．
　また，新幹線との共用走行区間を走行するため，同区間の異電圧セクション，上記保安装置の切換えや新幹線指令との指令伝達システムを再現している．コンテナ内に搭載したエンジンで電力を発生させ冷凍機を作動させる温度管理コンテナ（クールコンテナ）は，青函トンネル通過時に自動的にエンジンを停止しているが，その機能に異常が発生した場合の対応を訓練するモードも搭載している．さらに，事故再現シナリオシステムにより対応する路線の映像を作成し，作成した映像を運転士異常時対応訓練用シミュレータにて操作することが可能となっている．

写真：JR貨物のニュースリリースから