公益財団法人鉄道総合技術研究所は,総合建設会社の日特建設と協力し,経年によって老朽化した吹付のり面の低コストな補修・補強工法として「吹付受圧板工法」を開発したと発表した.
新工法のおもな特徴としては,老朽化した既設吹付材を撤去することなく施工でき,地山補強材(ロックボルト)と吹付受圧板(FSCパネル)を組み合わせることで,斜面の補強効果が得られ,従来の工法で斜面補強のために施工していた格子枠などが不要となる.この工法により,格子枠工などの従来の工法と比較して,施工コストが最大で約30%削減でき,従来の吹付のり面の補修・補強工法よりも低コストを実現している.
吹付のり面では,経年劣化によって吹付材のモルタルに開口亀裂や剥落などが発生する場合があり,特に,背面の地山が風化している場合,斜面崩壊に発展する可能性もあるため,補修だけでなく補強も必要となる.新工法は,地山を補強するロックボルトを,既設吹付材の上から地山に打ち込んだ後,斜面に突出たロックボルトの周囲に鉄筋などの補強材を設置し,その上から繊維モルタルをのり面全体に吹付ける.この際,鉄筋などの補強材を設置した個所がRC構造(鉄筋コンクリート構造)の受圧板となる.
従来工法(格子枠工)では,既設の吹付材を撤去した後,斜面全体にRC構造の梁部材を格子状に施工し,格子の交点に地山補強材を配置することで地山を拘束しているが,新工法では,格子枠工の代わりに地山補強材の突出部の周辺に,RC構造の受圧板を構築することで地山を拘束する.吹付受圧板は,格子状の梁部材より構造が簡略であり,施工に要する作業日数が少なくなるため,施工コストを低減できる.さらに,受圧板の効果により,地山補強材による斜面補強効果は,従来工法と同等とのことである.
なお,新工法は,2017(平成29)年4月にJR西日本の在来線において施工されたほか,現在までに鉄道分野以外を合わせて4件が施工されている.
写真:吹付受圧板工法の概念図(鉄道総研のニュースリリースから)