本誌2007年7・8月号に掲載された小西純一氏著作「余部橋梁その1,その2」が島秀雄記念優秀著作賞を受賞し,島秀雄氏ご子息・島隆氏ご臨席のもと,2008(平成20)年12月7日(日)にアルカディア市ヶ谷で同賞の贈呈式が執り行なわれました.
この賞は鉄道友の会(会長・須田寛,会員数約3600名)が趣味的見地に基づいて鉄道分野に関する優れた著作物または著作物に関わる功績を選定し,鉄道および鉄道趣味の発展に寄与することを目的として,2008年から創設したもので,選考委員会(青木栄一委員長)を設置して募集,選考を進めてきたものです.同記事の選出事由は以下のとおりです.
「本著の主題である山陰本線余部橋梁は,1912年に竣工した明治期を代表する鉄道橋ですが,2005年に架け換え決定し,現在その工事が進められています.古くから鉄道写真の名撮影地として多くの鉄道趣味者に親しまれ,現在ではその姿を惜しむ観光客が全国から訪れていますが,橋梁そのものの沿革やその果たした役割,技術史的価値などを一般向けに紹介した著書は乏しく,その建設や保守管理に多大な苦労があったことを知る人は少ないのが現状です.著者は,歴史的鉄道橋梁の研究者として,工事記録や古写真などを駆使して,計画,建設,開業からその後の保守管理に至る歴史を明らかにしています.ここで示されている参考文献の多くは,専門の技術者以外には難解なものばかりですが,著者は橋梁研究者として,また鉄道趣味者としてこれを十分に咀嚼し,一般読者向けに平易に解説しています.鉄道趣味が多様化する中で,鉄道施設に関する記事はこうあるべきだということを示した模範的な著作であり,文章と写真,図のバランスも申し分のないものです.また,余部橋梁という特異な構造の橋梁をとりあげて,その特徴や見所,歴史を明らかにしたのみならず,そのエピソードを紹介したり,技術史的な観点から保存のあり方に評価を加えるなどして,内容を奥深いものにしています.数多くの鉄道橋梁を調査してきた著者の豊富な経験と,鉄道橋梁に対する思いが感じられる著作であり,受賞作に選定しました」(原文どおり).
なお,このほかに,単行本部門では斎藤晃氏「蒸気機関車200年史」(NTT出版),関田克孝氏「のりもの絵本-木村定男の世界-I・II」(フレーベル館),また定期刊行物部門では江原光昭氏「京成電軌の四輪単車を再考する」(電気車研究会『鉄道ピクトリアル』2007年3月号増刊号掲載),名鉄資料館「知られざる名鉄電車史1・2」(電気車研究会『鉄道ピクトリアル』2007年7月号/8月号掲載),さらに特別部門としては鉄道史資料保存会(会報「鉄道史料」の継続出版に対して)が栄えある同賞を受賞しました.
集合写真は前列が受賞者の方々(右から三人目が小西氏),表彰盾を手にする喜びの小西氏.