★Premium Zone
この列車の編成は,大きく二つのゾーンに分けることができる.それは,現在我々が乗っているPremium Zone(プレミアムゾーン,以下Pゾーンと略)と呼ばれるグレードの高い,シティホテルと同様のサービスを自慢とする車両群と,Economy Zone(エコノミーゾーン,以下Eゾーンと略)と呼ばれる従来の寝台車両をベースにレベルアップをはかった車両群の二つで,両方のゾーンはロビーカーで分けられている.
(1)Presidential-Suite &Royal
まずはPゾーンからご紹介しよう.このゾーンのトップクラスのグレードは14号車で,プレジデンシャルスイート1室とロイヤルが3室の構成で定員はなんと5名!この車両の各部屋の共通点は,シャワーまたはバスの設備が設けられていることだ.さて注目は,プレジデンシャルスイートで,価格は一泊のルームチャージで15万円.ちょっと高く感じるが,室内は,ベッドルームとリビングルームの二部屋から構成され,まさにゆったりと列車の旅を楽しむことができる.二つの部屋の仕切り部分には小型のユニットバスも設備されていて,このなかにバスタブ,洗面所,トイレがコンパクトにまとめられている.リビングルームにはラウンジソファとゆったりしたチェアがあり,大きめのテーブルでは,フルコースのディナーのサービスを受けることができる(ただし,料理は別料金).AVサービスも行き届いており,リビングとベッドルームそれぞれに独立したユニットが設けられた.リビングのユニットは,昨年から衛星放送で開始されたハイビジョンとなっており,鮮明な画像が楽しめる.このほか,ロビーカーにある列車内放送局からの放送や,走行中の沿線のテレビ・ラジオ放送のほか,バーカーでのライブの中継もあり,さらにフロントに頼めば,好みのレーザーディスクをStaffが持ってきてくれるので,映画やBGVなどを楽しむことができる.ベッドルームの構成はFツイン(後述)と基本的には共通だが,ベッドの幅が広く,内装がより重厚な雰囲気となっている.
ロイヤルは,“北斗星”のものとスペースは共通だが,内装の変更や,シャワールームをトイレと分離するなどの改良が施され,大きく印象が変わった.ここのAVサービスもハイビジョンが導入されている.ルームチャージは,今回の寝台列車システムのグレードアップにともない7万円となった.
Presidential-Suite & Royal 列車中最高クラスのツインルーム.唯一のバスも設置されている.テレビはハイビジョン仕様.フルコースのルームサービスも受けられる.となりには,このスイートルームのサービスのために控室も設けられている.
仕切りはないが,リビングとベッドルームに二分され,まん中にバスユニットが入る.”走るホテル”での一夜に価値を認めた人のためのスペシャルルームだ.
(2)Flat-Twin & Double
続く13号車はフラットツイン(略称:Fツイン)が2室,ダブルが3室で定員は10名.このFツインという呼び方は11・12号車のStudio Twin(スタジオツイン:基本的にはシングルで,上段のベッドをセットすることで,ツインとしても使用できる部屋,略称:Sツイン)と区別するためにフラットという呼び方を追加しているのだそうだ.我々が今いるのがこの部屋で,ロイヤルよりも広々とした印象.シャワールームはないが,専用のトイレと折り畳み式の洗面所がある.ベッドはレール方向に2台並べてセットされており,奥にベッドボードがあって余裕を感じさせる.ベッドボード上部にはAV装置がセットされている.やはり,一部屋に窓が二つあるというのは今までの車両の概念からはなんともぜいたくだ.先にお話したとおり,ルームチャージは8万円.
F-Twin シャワールームはないが,各部屋にトイレと折タタミ式の洗面所が付き,プライバシーの確保は十分.簡単な食事のルームサービスも受けられる.この列車には13号車に2室設けられている.
ダブルは,文字どおりダブルベッドのセットされた部屋で,ルームチャージは6万円.1.5m幅の窓が広い印象.ベッドはFツインとは異なって枕木方向に配置されている.比較的シンプルな作りの部屋で,新婚旅行にはもちろんお勧めの部屋だが,小さな子供を連れた家族旅行にも,ダブルベッドは子供が落ちる心配もなく,他人に気兼ねすることもないので最適の部屋となるだろう.
Double 基本的な設備はF-Twinと変わらないが,ベッドがダブルとなり,進行方向とは直角に配置される.ハネムーナーや,小さい子供づれでの利用におすすめ.
(3)Studio-Twin
11・12号車は,先にふれたようにSツインが並んでいる.11号車は一車すべてがこのSツインで,定員は8名,すべてツインとして使用した場合は16名まで増える.ルームチャージは4万円だが,ツインとして利用する場合の追加料金は1万円で二人で利用するとお手頃な価格となる.部屋の構成は,従来のDXツインと似た感じだが,ベッドの幅が広くなり,床も広くなったうえ,専用のトイレと洗面所を持っており,使い勝手は大幅に向上している.シングルで利用する場合は上段がセットされない状態となり,頭上の空間が大きく広がる.12号車はSツイン二部屋分のスペースにシャワールームが設けられているため,定員は2名(ツイン使用で4名)減る.
S-Twin 上段は格納してシングルユースも可.一人でゆっくり過ごすにも良し,二人で気軽に”走るホテル”の雰囲気を味わうも良し.トイレ・洗面所はF-Twin同様,室内に設けられている.
(4)Lobby
10号車はロビーカーで,Pゾーンの乗車はここから,入口のEゾーン寄りにはデコレーションライトが輝き,出入り台とロビー内はガラスのパーティションで仕切られる.ここにはメインダイニングのメニューやバーでのプログラムが並んでいる.パーティションのロビー側には,この列車のシンボルの,たくさんの小さなガラス片で構成された銀河(Milky Way)のモニュメントがある.近づくと軽やかに開くオールガラスのドアを入ると喫茶もできるゆったりとしたソファが並ぶロビー,続いてフロントとなる.途中の駅から乗車する場合は,このフロントでチェックイン.Staffが部屋まで案内してくれる.フロントに続く通路に沿って,乗客の荷物を預かるカーゴルームがあり,その奥がオフィスとなっている.フロントには,列車のマネージャーが常駐していて,乗客の様々なリクエストに対応しているほか,旅行のアドバイスや,到着駅でのタクシーの手配なども受け付けている.また貸し出し用のレーザーディスクもここへ頼む.このほかのフロントの機能として重要なのは,エコノミーゾーンの旅客との接点となっていることである.いまだにゆかた姿で列車内を歩く人がいるようだが,このような常軌を逸した行動をとっても,ロビーカーからPゾーンへは入ることは出来ない.いっぽう,Eゾーンに乗車していて,メインダイニングでの食事や,バーカーの予約をしたい場合はこのフロントに申し込めばよい.
ところで,Staffはみなヘッドセットを付けているが,これはこのロビーカーのオフィスとの連絡用.列車のどこにいても常に情報を送受することが可能で,リアルタイムのサービスを提供できる.実際の使い方はイラストのように…….
「ボク,お部屋がわからないの?」
「………」
―ヘッドセット オン!―
「ロビーカー願います」
「はいロビーカー」
「13号車で6-7歳の男の子が,お部屋がわからないようなのですが」
「ちょっと待って,今日Pゾーンでお子様をおつれなのは……
ええと,13号車2号室の田宮様が男のお子様をおつれです」
「了解 サンキュー!」
―ヘッドセット オフ―
「さぁ,ここがボクのお部屋よ.今度は忘れないでね.オ・ヤ・ス・ミ」
と,ヘッドセットの威力はかくのごとし!
(5)Main-Dining
さて列車後部の2両は,メインダイニングとバーカーとなっており,列車中で最も華やかな雰囲気の車両である.15号車はメインダイニングで,大きな窓と高い天井を生かした間接照明を中心としたやわらかなライティングが特徴.列車ごとにデザインテーマが異なっており「アンドロメダ」「カシオペア」「シグナス」「プレアデス」といった星座の愛称が付いている.食器やグラス類もそれぞれの星座の特徴をあしらったワンポイントが入っていて楽しい.ここの料理は,ヨーロッパにおけるミシュランの五つ星のレストランできたえたシェフがいることで有名なJRホテルグループの「ホテルエドモント」が担当しているとのこと.調理器具も,様々な安全対策を施したガス調理器具が使われており,今までのように地上で調理された物とは違うピュアな料理が楽しめるとのことである.特にステーキは,実際に席のそばで炭火による調理をしてくれるそうで今夜のディナーが楽しみだ.
Main-Dining ゆったりした配置と,ダークパープルの内装,そしてスポットの照明が食卓の雰囲気を盛り上げ,上下に広くとった窓にはトワイライトの街が流れる.
なお,この車両には1両ごとに星座にちなんだ愛称が付けられている.今夜は”アンドロメダ”,ほかに「カシオペア」「プレアデス」「シグナス」がラインアップし,グラスやディッシュにはその愛称とシンボルが描かれている.
(6)Observation-Bar
16号車は,バーとなっており,入口から3段ほど上ったハイデッキ部分が車両の中心付近まで続き,そこから後部に向かって少しずつ下がるラウンジとなっている.そして,優雅なカーブを描く列車最後部にはステージが設けられていて,過ぎ去る景色をバックに演奏を楽しむことができる.バーのカウンター部分は,バーテンのいる部分が通常のフロア高さで,乗客はハイデッキ部分となっており,ゆったりした椅子に座りながら,バーテンとの会話を楽しむことができるよう工夫されている.ぐっと明度を落とした照明により,夜になっても車窓の風景を楽しむことができる.また,夜があけてから,朝食をすませたあとに,去り行く景色を眺めながら飲むアメリカンコーヒーはまた格別だろう.
Observation-Bar 列車の最後部にステージが設けられている.
流れ去るライトのラインをバックに聞く音楽,あなたはジャズ,クラシック,それとも…….列車により,季節によりステージが変わる.客席フロアはステージから離れるにしたがって高くなっており,後の席でも十分楽しめる.後部はカウンターバーとなっている.
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