鉄道ファン2025年4月号(通巻768号)
『鉄道ファン』2025年4月号
2025年2月20日発売
定価1300円(税込)

JR西日本など,3Dプリンターを活用した鉄道駅舎を建設へ
〜第1弾は紀勢本線 初島駅〜

JR西日本など,3Dプリンターを活用した鉄道駅舎を建設へ

▲初島駅の完成イメージ(画像:JR西日本提供)

JR西日本とJR西日本イノベーションズ・セレンディクスの3社は,紀勢本線 初島駅の駅舎建替えに際し,建設用3Dプリンターを活用した駅舎を建設すると発表した.

 これは,老朽化した木造などの駅舎の建替えに際した新たな試みとして検討を進めてきたもので,その第1弾として実施が決定したもの.3Dプリンティング技術を用いた駅舎建設は世界初の事例となる.
 新駅舎は,高さ約2.6m,幅6.3m,奥行き2.1mで,10平方メートル弱の建物を計画している.建物の基礎部分を含めた外形は,最新の3Dプリンター技術を用いて出力する.出力したパーツに必要な処理(鉄筋・コンクリート充填)を行なったうえで,現地で組立を行なう.現地ではクレーンでパーツを組上げ,接合して完成させる.
 当日の施工時間(組上げ~躯体完成)は終電から始発までの約6時間を想定している.これにより,現場での作業が大幅に効率化され,在来工法(鉄骨造や鉄筋コンクリート造)と比較して,工期の短縮効果が期待されている.

JR西日本 227系1000番代

写真:JR西日本227系1000番代  編集部撮影  吹田総合車両所にて  2018-9-8(取材協力:JR西日本)

 鉄筋コンクリート製であるため,耐久性や耐食性に優れていることや,従来のプレキャスト工法と比較して型枠を使用しないため,造形の自由度が高く,デザイン面でも工夫が可能となっている.外装デザインには,当該地域ならではの特性を反映した地域住民に愛される駅舎を目指し,地域共生に貢献する.なお初島駅では,壁面に有田市の名産「みかん」と「たちうお」をイメージした装飾を施す.
 本プロジェクトでは,建設や維持管理にかかるコスト効果を詳細に検証するとともに,今回建設する駅舎を基本モデルとし,ほかの駅への展開可能性を検討する.
 本技術の導入は,顕在化する労働力不足に対応することで,鉄道施設の計画的な更新を進める.これにより,鉄道インフラの持続可能性を高め,JR西日本の長期ビジョンに掲げる「安全,安心で,人と地球にやさしい交通」の実現を図る.
 また,本プロジェクトに留まらず,最先端技術の活用による鉄道インフラの革新と,地域に根ざした持続可能な交通サービスの提供を目指すとしている.

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