
▲次期東北新幹線車両「E10系」のイメージ
JR東日本は,E2系・E5系の後継となる次期東北新幹線車両「E10系」の設計に着手すると発表した.
E10系は10両1編成で,最高営業運転速度は320km/hとする.次世代新幹線開発の試験プラットフォームであるE956形「ALFA-X」で検証してきた技術を活用し,地震対策として逸脱防止用の「L型車両ガイド」の設置に加え,ブレーキ距離の短縮および地震時の揺れを吸収し車両の損傷や脱線を防止するための左右動ダンパの採用など,より高い安全性を目指す.

▲エクステリアデザインのイメージ
エクステリアデザインは,東北地方の山々を想起させる緑色を基調に,次期東北新幹線車両がつなぐ沿線各地の山々などの自然から得たインスピレーションをイメージしたカラーリングとし,上部の明るい緑色を「Tsugaru green(津軽グリーン)」,下部の濃い緑色を「Evening elm(イブニングエルム)」を採用する.
車体横のラインによりこれまでの新幹線のイメージを継承しながらも,日本らしさを表現するモチーフとして「桜の花弁」の形状を模した曲線を車両間でつなげ,新幹線車両のデザインに新たなイメージを吹き込む.
なおデザイナーは,JR東日本の車両として初めての海外デザインファームとなるtangerine社が担当する.

▲「TRAIN DESK」を発展させたサービスのイメージ
車両のおもな特徴として,「TRAIN DESK」を発展させたサービスを導入する.これは「TRAIN DESK」の目指す「移動時間の有効活用」という価値をさらに高めるための機能を備えたサービスで,シート配列を2列+2列とし,現行の「TRAIN DESK」と比較して,隣席とのスペースにゆとりを創出する. 大形荷物置き場の拡幅や電源コンセントの全席設置など,より快適な移動空間の提供を目指し,サービスをデザインしていく.このほか,車いすに乗車したまま車窓を楽しめる車いすスペースの設置など,バリアフリー環境の向上を図る.

▲2030年代にむけてアップデートしたグリーン車(左)と普通車のイメージ (右)
「スマートメンテナンス」(車両の状態に応じた適切な保守)に対応可能な車両システムを導入するほか,新幹線営業車では初めての採用となる冷却モータが不要なブロアレス誘導電動機(自己通風形誘導電動機)の採用や,車両駆動インバータに高効率なSiC(シリコンカーバイド)素子の採用により車両駆動システムの効率向上を図る.
5号車には荷物輸送用ドアを設置し,よりスムーズに積み下ろしを可能にすることで,途中駅での荷物の積み下ろしなど「はこビュン」サービスの柔軟性を高める.また,将来的な東北新幹線の自動運転導入を目指した機能搭載の準備・検討を行なう.

▲車椅子スペースのイメージ
E10系の詳細な仕様は,決まり次第,別途発表される.車両は2027(令和9)年秋以降に落成したあと,各種の走行試験を実施し,2030(令和12)年度内の営業運転開始を目指す.あわせて,乗客志向で質の高いサービスの実現に向けた開発や,環境負荷軽減に向けた検討などを継続し,サステナブルな社会の実現に向けた要素の開発を進める.
なお,今後予定されている北海道新幹線の札幌開業にともない使用される車両については,今回設計する車両をベースに別途検討される.
画像はすべてJR東日本ニュースリリースから