〜『鉄道ファン』1987年6月号から〜

拝啓 JRグループの社長さま

JR四国 新しいフェリー・トレイン

1)開発コンセプト
新しく開通する本四連絡橋を経由して,東京と徳島・高知・松山を直接結び,船舶よりも短時間で運ぶ列車.積載する車種は普通自動車の大きさ(全長4700mm,全幅1700mm,全高2000mm)とし,貨物は従来のフェリーやピギーバックを利用していただく.車両の積み下ろしは,目的地の近くの貨物駅跡地などを利用して専用のプラットホームを設ける(東京は目白で車を積み,新宿で一般の利用者が乗車).四国内も,市街地にも近く便利な駅を選定したい.

JR四国 フェリー・トレイン

2)車両の構想
基本的な配置は,1両の半分を自動車搭載スペースとし,各車に2台ずつの割当.後の半分のスペースを旅客用とし,従来の寝台のグレードアップからB個室,そしてユニットバスつきの2人用コンパートメントとバリエーションを用意.寝台幅は,B寝台でも850mmを確保する.自動車の積み下ろしに際しては,車両の側面が開き,この上に自動車を乗せるパレットが車室からせり出して来る.パレットの両サイドには,自動車が乗り込むためのスロープが折り畳まれている.約10mおきに2台ずつの配置としているため,積み込み場合も一度に出来るので,積み込み時間の大幅な短縮ができる.ただし,5mもの開口部ができるため,台枠は十分強化する必要がある.自動車搭載部の車側は通路としており,ほぼ自動車の長さいっぱいに3枚の引き違い戸を設け,列車の走行中にも自動車のドアをあけ,荷物などの出し入れを可能とする.この通路部分は約100mm高くし,下部にパレット出し入れ用の駆動部分を収納する.従来のブルートレインとしての機能も備え,自動車がなくても利用ができる.当然,食堂車も連結する.編成は,各方面とも4両が基本で,四国内で最も長い時間走る高知行きの編成に食堂車を連結する.
①Bネニフ
各編成の上り方に連結され,車掌室付.車両搭載スペースの下に,4両分のサービス電源の給電能力を持つディーゼル発電機を搭載する.
②Bネニ
Bネニフと基本的な配置は同じだが,車掌室がない分だけ定員が多い.
③A個ニ
フェリー・トレインの花形.定員2名の個室には小形のユニットバスが設けられ,一日の疲れを流すことができ,15㌅のテレビやBGMで,列車の夜をゆっくり楽しむことができる.
④B個ニフ
この春登場したB個室デュエットもラインアップに加えたい.B個室の構成から,自動車搭載スペースに上段部が張り出しており,ここに搭載する自動車は1BOX以外のものに限られる.

フェリー・トレイン 編成図

3)車両のデザイン
①エクステリアデザイン
基本的には車両限界いっぱいを用いた客車であるため,現在の寝台客車の印象と車の部分をのぞいては外観的にあまり変わらないであろう.ただし,そのカラーリングについては,コーポレートカラーであるライトブルーを用いて従来のイメージを一新したい.自動車を乗せる部分に書いてあるFTのマークは,フェリー・トレインのマークである.
②インテリアデザイン
今までの寝台列車で最も改善を望みたいのは,寝台の幅とかの物理的なものでなく,プライバシーをどうするのか,ということであろう.寝ている間というのは,人間にとってまったく無防備な時である.カーテン1枚しかプライバシーを守るものがないのは考えものであろう.現実に,女の人など寝台列車を利用したいと思うけれど,どうも……という声を耳にする.20系ブルートレインが登場した時には,“走るホテル”と言われた.当時はそうであったかもしれないが,今ではとてもホテルとは言えない.カルテットとかデュエットがそれに対する答えであろうが,時代はもっと進んだものを要求している.ということで,A個室を検討したのがこのイラストである.1室は定員2名で,ユニットになったバス・トイレがついている.このバスは本格的なものであり,列車に揺られながらの入浴もまたおつなものであろう.そのほかにも快適なナイトタイムを過ごすことができるよう,照明やTV,BGMなどにも十分に気を配りたい.

フェリー・トレイン バス付特別室
JR四国 フェリー・トレイン 平面図